居心地【編集中】

この写真はとても気に入っている。おそらく、
何の変哲の日常に見えるのではと思う。


パネルにしているので、ASJのイベントでは
しばしば、語らせて頂く貴重な一枚です。


写っているのはノラです。この界隈を、
あちこちお世話になりながら散策する者。
その経路になるようこの住まいのオーナーが
取組み、とうとうドマに上がりこんでいる、
その時に遊びに行っていて、出会った光景。


ノラの警戒心は人一倍強い。慣れなれしくは
なかった。その彼女がドマには上がってくれて
いる。この場所は、自身にとって安全圏と
認識したらしい。


・・・明らかに室内。私の設計では、ここは、
室内ではなく、室外にあるものと考えて
設計に取組んできる。内なる外は、外の方に
近く、むしろ、冬でも外であってくれれば、
意識的には、外の空間を取り込むものとなり、
限定される室内空間の意識的拡張が生まれると
思っておりました。


難しい表現ではあるけれど、拘束された室内、
特に断熱区画される寒冷地の建築空間を、
特殊な構造を用いずに、既製の概念を超えて、
創造できないか?という一つの成果である建築、
これを身を持って体現してくれたのが彼女。


ここまで上がり、ねだるのに、警戒心は解かない。
しかし、彼女が安全圏と考えたその縁は、
完全な室内空間であった。


光も素敵である。窓外も写る状況であれば、
外が曇天でも、室内はシルエットに写って
しまうに違いない。人工照明を灯すことなく、
自然光だけで、この明るさ感を生み出す採光、
野生を備えた猫すら、踏み入れる領域を
建築の内に創造できた、その成果。


ご理解頂けただろうか?・・・難しい?
難しいかもしれません。ですが、例えば、
難しいとした例えば『居心地』の再現を
野生の生物にも実感頂けた実例と思えば、
それが、ここまで導きいれたオーナーの
努力の成果ではあったとしても、建築も、
寄与できたのではと思うと、とても、
嬉しい。そんな刹那の一枚を改めて。