室蘭

自分の学んだ街、室蘭は鉄の街でもある。かつての賑わいは今は無い。しかし
手がかりが数多く残されているように思う。街の衰えは幸運にもかつての痕跡を
残しながら進行したらしい。・・・それはまた何れ。


太平洋に面して切り立つ絶壁の連なりは地球岬からぐるりと回りこみ、噴火湾
一部を切り開く天然の港。箱庭のように湾に面して展開する街並のパノラマは
壮観だ。その湾を埋めるのは巨大な工場群。フェリーや停泊する船舶、湾を結ぶ
幹線道路、測量山や傾斜地を雛壇のような埋める住宅、狭い低地並ぶ建築群。
それらが走馬灯のように、しかも手が届きそうなほど間近に広がっている。


夜の風景は特別に美しい。



工場建築はとてもスレンダーだ。稼動を続ける工場の明かりは消えることがない。
その照明が浮かび上がらせる線材で築かれた巨大なヴォリュームは繊細で美しい。
機能と効率、無駄のない姿はその大きさではなくむしろ”軽さ”を強く意識させる。
学生の頃も好んで良く眺めに出かけた。ひとつの完成されたデザインなのだと思う。



群として広大。必要に応じて、必要な施設が必要なだけ並んでいるのだろう姿。

”軽さ”。

光と影の陰影を伴い浮かび上がる線材の骨格に興味を惹かれてしまう。



いまや室蘭の象徴的な存在のひとつかもしれない白鳥大橋も吊り構造故にその
圧倒的なヴォリューム感にも関わらず軽やかに街並みの一部を担っている。




などと懸命に文字列にしてみているのだけれど、単純にブレードランナー
映画の世界を感じて興奮してみたり、地獄の黙示録のシーンを彷彿としながら、
眺めていた。ちなみに白鳥大橋を走る時はパリ・テキサスを思い出してしまう。





.