エスキース


先日のASJのイベントではたくさんの方にお会いしました。
このような場に参加できたことを感謝しております。


私は、来場された方に何を伝えられたのだろうか?
それが設計の機会へと結ぶことを期待しますが、
出会いの際には、私は何をする人なのかを伝えること、
家を建てる人にとって、それが大切なことと成り得るのか?
様々な案内をさせて頂きました。


展示案内していた住宅建築は、全て特定のクライアントの
ために設計したもの、その成果である建築です。
一般的、標準的とは相反する特殊なもの、特別なものです。


敷地も様々な条件も異なり、同じものは二つとありません。
建築に至る過程も同じであったことはこれまでありません。


では、設計とはどのような展開となるのだろう?このことを
案内することは、実はとても難しいように思います。


敷地の持つ可能性を最大限に引き出すことが大切です。
先ずは敷地と向かい合う事。これに尽きます。


今はgoogleで敷地を眺められる便利な世の中ですが、
やはり直接見ることで得る情報量は圧倒的です。


設計期間に何度も敷地を訪ねます。故に敷地写真は相当量。
この事例では初めて訪ねたのが冬。やがてタンポポが咲き、
綿毛となり・・・着工となりました。写真はその一部です。


写真はしばしば見返しますが、それは確認のため。
私は体が敷地を覚えるまで滞在し通うようしています。
妙な言い方ですが、体の感じたことを大切にしています。




敷地を外側から眺めるのはもちろん、敷地の中央に立ち、
周囲に何が見えるのかを眺めます。
時には、生えている雑草もじっくり観察してきます。


雑草の茂みに踏み入るのは躊躇われますが、敷地の中でも
特に茂る場所があれば、そこは良い場所かもしれません。


植物が元気である、ということは元気な理由があるはず。
そのような場所は決まって、気持ち良かったりします。
生命の好む場所から敷地を知ることも出来そうです。


敷地の中のどこに住まおうか?その感覚を大切にすると、
雑草の茂みはプランを考える上で重要なヒントなのかも。



これは敷地を見て、要望をお聞きし、予算などの条件を
確認した上で始めたエスキース、若しくはゾーニング・・・
要は考え始めた時に描いたスケッチを閉じたファイルです。


イベントではこの資料を用意していました。
ちらりとはお見せしたのですが、プライバシーに関わる
ものですので、ここでは資料の積んだ様子だけ案内します。


この資料には多くの考えた事、悩んだ事、決断したことが
納まっています。眺めると、一つのプランが修練してゆく
臨場感があったり、全く異なるアプローチの様々な検証を
行っていたり、中にはただの落書きも・・・


設計が終るころにはこの厚さの資料が数冊出来ます。
ただ最初の一冊はアイディアを探している時のスケッチを
納めてあるので、特にお気に入りになります。


これが後に実を結ぶスケッチだったのか、という想い入れの
ある絵が残っています。






二日前の記事の中に、


「好きな食べ物は何ですか?
 好きな映画は何ですか?
 好きな音楽は何ですか? 」


という具合に、要望を伺いますと書き記しました。
それが具体的な何かに至る約束は出来ないかもしれません。
ひょっとすると、ただ聞いただけになるかもしれません。


ではあるのですが、聞いてから眺める敷地は、間違いなく、
それまでになかった視点が増えていることを感じます。


直ぐに、具体的にとなるものではなかったとしても、
住まい始めて感じること、知ること、発見することは多く、
必ずどこかで生きてくるもの、生かすべきものと思います。


同じ敷地にあっても違う植生、元気な雑草の茂み、
その場の気持ち良さ、それらを建築に。
設計の楽しさ、奥深さでしょうか。




ご興味があれば、ご案内致します。
お気軽に連絡を頂ければと思います。