設計。

お手伝いさせて頂いていたサ高住が竣工した。
サ高住・・・サービス付き高齢者向け住宅
『事業』となる建築の経験はあまりない。
その意味では大変に勉強させて頂いた。


『住宅』も個人の事業に違いないのだけれど、
営利を目的とした事業の一部となる建築は、
勝手が違う。何が出来るのかの可能性も探る。


マンションのように、建築のプロでもある
ディベロッパーがオーナーとなる設計では、
要望が明快なだけにすべき事は明らかだ。


サ高住は現在、補助があるために札幌及び
近郊でも随分と多くが立ち並ぶ。
この建築ではオーナーが建て、運営者が
借り受けて業務を営む形態をとっていた。


運営者は新規参入となる方々。意欲はある。
けれど、建築のプロではない。
設計当初から参加頂き、特に仕様決定など
多くに携わってこられたのだけれど、当初、
要望は優柔で決めかねているように見えた。


提案では、より分りよく方針を示すべく、
パース等も製作、説明をさせて頂いた。
どのように結ぶかは予想を立てていたものの、
仕上げ選びではあえて、運営者の方々に
決めて頂くような手法をとることとした。


悩みぬいて選び出すという作業を通じて、
自分達で造る覚悟が芽生えるのだろうか、
いつしか要望は明快となり、質疑も的を
射るようになり、判断が追いついていた。
こうなると現場は俄然、面白くなってくる。


誰かに任せきりにするのではなく、
良いものを求めて挑戦を始めたときこそ、
設計者は出番が増えるようにも思う。


挑まれれば応える。それはより緊張を強くし、
建築現場をますます楽しくしてくれる。


頑張り、懸命、夢中、楽しさというのは、
伝染し、伝播するものだと思う。現場も
巻き込むほどに揚々と出来たのではと思う。






先日、オープンした建築を訪ねてきた。
予想通り、しっかりと整い、始まっていた。
竣工から2週間、既に手を離れたことを実感する。
その光景には寂しさを覚えるのだけれど、
何よりその光景は、嬉しさをも実感する。
建築は終えたけれど、無事に始まったことに。


サービスを提供する運営者が、建築を収益を
生む道具としてだけではなく、愛情を持ち、
愛着を感じて頂けたなら、それは、より望ましい。
心からそう思う。そして願う。


運営者彼等は、建築中のあれこれ逸話を語れるだけ
十分に携わってきている。
その思いが、ここに住まわれる方々に伝わり、
住まう場所としての温もりを育むなら、
それこそ理想的な建築の在り方ではないだろうか。




建築には色々な建て方、関わり方がある。
「設計」は「デザイン」だけでもない。
どこまでを「設計」と考えるかは設計者次第。
日々勉強、楽しい機会を得られた事に感謝。


















※クライアントに応じて設計のスタンスは
変わりませんが、スタイルは変わります。
要望頂き、応えるのことが基本です。


この建築のように、事業の成功を期待して、
より多くのことをお願いすることもあります。
中には、要望強く自己解決される方も在りますが、
現場を含め、関わる者は皆、プロでもあります。
存分にプロの能力を引き出すことも仕事です。
クライアントの喜ぶ笑顔こそが全て、
関わる多くの人が頑張る建築は、やはり楽しい。
そのことを再確認させて頂きました。