ギャベ 



ペルシャ絨毯を扱う知人の展示会を覗いてきた。
見れば見るほど素敵なものだった。図案を元に
細い糸で毛足短く織り作られたペルシャ絨毯、
その荘厳さには改めて驚かされた。
最早絵画、鑑賞したくなるほどのものだった。


細密な表現の出来るペルシャ絨毯は、点の一つも
綺麗に浮き上がる。小まめな色分け、コントラスト、
計算された図版故に、小さな花のあるものは、
カメラで覗くと菜の花畑に本当に居るかのような、
不思議な感覚を味わうことが出来た・・・
気が、しただけだろうか?




毛足の長い手つむぎの太い糸を使うギャベは、
対して直線が出せず、どこか緩い。緩いのだけれど
間が抜けているわけではない。温もりが伝わるもの。
ドット画の動物が居るとホッとするのだけれど、
何も描かれてはいない、ただの絨毯であっても、
不揃い糸、染めのムラが作り成す自然な風合いが、
たまらない魅力を感じさせてくれる。
ふーと眺めると草原を流れる風を感じてしまう・・・
気が、しただけだろうか?




ギャベの素朴さは、現代にも強く影響を与えるの
だろうか?いつもこれを思い出す。


オランダはハーグの美術館で見たVilmos Huszarの絵。
記号のような対象はまるでギャベに登場するドット絵、
草原の動物達のよう。グラフィックではなく絵画である
この絵は、揺らぐ手書きの線故に、モダンなアートで
ありながら、どこか滑稽で、素朴さが印象的だった。


脈略なく感じたことなので、違うかもしれない。
けれど、感じたということは何かあるのかもしれない。


ハーグの美術館はモンドリアンが具象から抽象へ移行した
正にその時!という記念碑的な絵画を見ることができる。
20世紀の芸術において特に重要な場所であるように思う。


そこで出会ったディ・スティル派の一枚の絵画と、
ギャベを見た印象とが重なり、捨て置けない気分だ。
不思議なのか、当然なのか。
まさか、ディ・スティールとギャベが重なるとは!
遠い旅から戻り旧友と再会したような・・・
気が、しただけだろうか?