ドライブ その2

伊達方面へ向かう時、決まって寄るのは『善光寺』。
ここは何時訪ねても、実に気持ちが良い。


一つには有珠の美しい景観と相まっていることが
大きいのだと思う。おそらく、善光寺がここを
選ぶに十分な地理的特性があったに違いない。


開放感のあるお寺にはやや斜めにアプローチする。
引き込まれるように招かれてしまう境内は、
まとまった広さがあるのに十分に囲まれてもいる。
森を背にして大きな二つの屋根の建築があり、
威圧的にではなく威厳を備え、静かでありながら、
楽しげにも見える。


朝9時過、既にセミが煩く、焼かれるような陽射し、
大屋根の作る影は涼しげ、背後の森の緑は濃く深く、
何とも居心地の出来上がった風景、とても魅力的。


夕立後の夕暮、屋根がしっとりとした、光線の良い
頃にも出会ってみたい。


開け放れた室内は境内と背後の山が結ばれている。
南側の境内を前に大屋根が深く影を落とし、
北側の森の前には花々の庭が広がっている。


室内から境内を眺めると、陽射しに向かう事になり、
眩し過ぎる上に、今時期は暑すぎる。


対して、北庭は高い陽射しが照明のように草花を
照らし出していて、その輝く庭を暗がりから眺める
ことが出来る。まるで映画館のように。


なぜ、これほど綺麗に庭が見えるのか?実に素直で
シンプルな方法、心地の基本があるように思う。

その室内、田の字のプラン連続し、障子や襖が
開け放たれていて、風通しが素晴らしく良い。
鴨居は低く、180cmをやや下回る。天井の高さは、
255cmくらいだろうか。鴨居が太く低いので、
室内天井の高さは高くはなくとも十分な大きさ、
結果として空間の重心は低く抑えられ、立ち
歩き回るよりも座ってまどろみたい衝動に駆られる。


明暗の対比を南北に持ち、その中庸たる室内は
やや陰影を帯びる落着き具合、人の居場所を
創り上げる工夫は、何故?とは分らずとも、
訪ねると必然として受け入れることが出来る。


様々、実測調査をしてみたくなる、空間の
スケール感を保つセンスの感じられるお寺です。


 

左は本堂から広間方向を眺めたもの。座敷奥には
円空仏が見える。本物は重文なので、在るのは
レプリカだそうです。


右は境内からの一枚。建物を透かして奥の庭が
見えている。この見え方は何時見ても素敵だ。
各所にいつも新しい花が飾られていて、その
心配りに心地良さを感じ、感謝の念を覚える。
この色は珍しいのかな?
境内の庭木も印象的で、
大きな古い樹木から、
手入れのされた草花まで、
地域に愛されている佇まい、
訪ねさせて頂いては、
少し、触れさせて頂く。