竣工


この春は3つの竣工が重り、無事に終える。
一つは住宅(非公開)、一つはマンション、
もう一つがこの仙台の建築。


実のところ、お手伝いの仕事です。ではあるのだけれど、
津波補助を受けるために既にあった計画をひっくり返し、
計画から一年という短期間で取り組む機会となりました。


初めて出会った敷地は一年前の4月、大きな更地でした。
設計は運送会社の倉庫と拠点となる事務所その他。
どこから手を付けて良いのやら、悩む大きさと機能。
倉庫?ただ大きな空間があれば良いのだろうか?
自分なりに調べるところから始める。敷地に隣接して、
既存施設があり、拡張となる事業、行く機会は多くは
ないので、訪ねた際は既存施設での業務の観察を心掛ける。


荷を運び入れ預かり、指定の日に指定の場所へ届ける。
基本的はこれが運送の業務。しかしその過程を眺めると、
事務所で一枚の伝票の受け渡しだけで粛々と進むように
見える。それだけで伝わるの?という業務の洗練さ、
訪ねる度に収容物が変遷する倉庫の稼動具合、運ぶもの
の量に驚かされる。担当者やドライバー等をはじめ、
多くの方に話しを聞かせて頂き、設計に必要な情報を
集める作業は、興味のまま楽しい時間でもあった。


予算に相応する建築規模の策定は、それとは別に進める。
かなり変形した敷地形状、トラックの出入りや展開を
考えると、出来るだけ大きな空地を残しておきたい。
配置計画は解けないパズルのようであり、最良を探す。


建築で出来る事、その規模、業務の内容、会社や現地の
要望への理解を深める中、やがて像が浮かび上がる。
提案は昨年末にこのブログでも案内したパースです。




この仕事は、とても多くの、良い方達との出会いに
支えられました。現場に携わった者として印象に
強く残るのは、現地拠点長さんとゼネコンの現場
所長さん。現場が動きだすと、造るものを具体的に
決めて行く難しい過程を踏むこととなる。
勝手に出来るわけではなく、多くの方の了解を得、
皆が納得できるもので且、実際の用途に耐えるものを
考えて行く作業を一緒しました。
終盤は8時間通しの定例打合せが立て続く具合。


最初の写真は仕上工事の真最中。夜が遅くなったにも
関わらず、暗くまで作業は続く、その最中の一枚。
倉庫は鉄骨造。シンプルな構造は壮観、気持ちが良い。
2月に案内した鉄骨が組みあがるとこのようになる。


実はここが最も変形した敷地、そこにパチリと
納まる建築形状は、構造設計も施工者も泣いたに
違いない極めて不整形な平面。実際、配筋検査の
際に目の当たりにする曲げられた太い鉄筋を組み
上げられた様子は記憶に強く残る。


その甲斐あり、見た目には不整形には見えない建築。
出来るだけ労を多く取り組むも、その苦労は見せない、
それが良いのだと思う。結局、建築は主役ではない。


結果、照明と相まってなかなかSFチックな光景が
仙台の、とある場所の夜に浮かぶ。今後はここが、
毎日の職場となって、日常の光景となるのだけれど、
垣間見えるような気がする、嬉しい一枚。


対して悩んだのは事務所。安価な鉄骨造での計画。
元々デザインをどうこうという意図はなく、場所が
あればとも言える建築。自分が携わる中で感じて
来たことの一つに、この会社の社風から考え、
東北にある一つの帰る場所、という想いがあった。


事務所然としてカッコよく設えようかとも思うものの、
どこか住宅的な温もりのあるものの方が良いなと、
考えた。勾配屋根と立平板金の外装としている。
倉庫棟のかっちりしたスパンドレルの、鋼板の線に
対して、立平は人が折り曲げ結んで行く外壁、故に、
僅かに歪み表情を作り、落ち着くような場所、
皆が集う場所に成れれば良いなと願う。

と、矢継ぎ早に3つを終えた今、ややテンションが
落ちているなーと反省しつつ。