見学。

先月、クライアントを二つの住宅、家具店を案内する。
今も快く迎えて下さる住宅オーナーに感謝しております。


設計の際は『何だろう?』という事が多々あったはず。
例えば室内の明るさを作る際、南側の開口に重きを置かぬ
私の設計は困惑される。何かを見る事のない、換気の役割
すら窓など、不思議に思われる事も多々。


それでも私を信じてOKを下さり、今は実際に住まわれ、
それらの現実の効果を知るオーナーを前に解説する
気恥ずかしさ、否めません。


創り得た空間、出来るだけ全体を見通せる視点を設け、
同時に必要なプライバシーを考えて適度に閉じる加減、
(※これは各々の住宅により違います。)そして、
そちこちに様々な場所が生まれる工夫を施す。


大小、開閉、明暗、様々な空間が組み合わせる空間。
そのどれもが平面では見えないもの、写真では理解でき
ないもの、これを実感して欲しいと願いました。


おそらくは住んで初めて、陽のウツロイ、照明の明るさ、
四季の変化、それらを通じて初めて体感できるもの、
理解し得るもの。今はその予感を得て頂けたならと思う。




家具店では椅子を中心に見て回る。私、椅子好きです。
特に身体に近い存在、実際に座り、幾つか比べると、
自分好みが見えてくる。見えてくると何が良いのか?
考える事が出来、結果、自分の身体を知ることとなる。


経験や知識ではなく、身体ある人であれば間違いなく、
感じる事ができる好き嫌い。心地への実感。


自分への理解を深めると、座るという日常の行為から、
空間の要望を膨らませることが出来るかもしれない、
提案空間を実感を伴って判別できるかもしれない。


家具には当然、デザイン性があり、好みに直結する。
けれど身体は素直、心地はデザインでは決められず。
良い家具は一生もの、選び抜ければ、安定した心地
良い場所を確保することが出来る。確かな礎の一つ。




建築を説明することが難しい最大の理由は、現実の
空間であること。身体に関わる感覚が実存すること。
言葉でも写真でも理解する事は出来ないリアルさ。


家具店巡り、可能な時は必ず行う私の設計手法です。
何故か私も毎回座るので、自分の感覚を澄ます必要も
あり、終えると相当疲れます。でも、良い出来事。


案内させて頂いた二つの住宅、どちらも好きな家具が
あります。座らせて頂くと、空間と相まって心地を
実感して頂けたのでは?と思う。




既知を巡った私がヘトヘトの夕暮れ、クライアントは
さぞ、お疲れだったに違いない。