『石』というのはとても重い。そして、高価。
中には安価なものもない分けではないが、
基本的に高価、更にその重さ故に施工は難しい。


今、二つのマンションの現場があり、何れも
デザイン監修をしている。分譲マンションでは
エントランスがその見せ場の一つとなる。


目新しさ、斬新さ、装飾性などに頼るデザインは
容易に古びるだろう。正攻法に質実を求め取組む。


一棟は、建設費が高騰する中、選んだ素材が無事に
見積に残り、その工事がすすんでいる。それが石。


石の中では比較的安価なものを選び、これを粗い
ビシャンで仕上ている。一般にはバーナー仕上、
本磨き仕上となる石、より深い表情を求めるべく、
ビシャンと呼ばれる道具で石の表面を叩いた。


本当は、もっと表情の深いノミ切仕上と考えたものの、
これは人の手作業が増えて高価になり過ぎるため断念。
しかし、粗ビシャンという一手間加えた石は、
割り肌とも違い、強さ、硬さ、重みを与える上に、
緻密さ、丁寧な仕事の痕跡、十分な表情の深さを魅せる。


高価で綺麗な素材も良いのだけれど、より一般的な
素材であっても、一手間を加えたものは捨てがたい。



厚さ40mmの製品規格外の大判。15cm×15cmの
サンプルを数個、持ち運ぶだけでも難儀する重さ、
しかし、石職人の現場の整然とした様には驚く。


綺麗に並べられ、整然と作業がすすむ。その仕事は
間違いなく力仕事であり、しかも緻密さも求められる。


丁寧に硬質の素材に加工を加え、重いこの素材を、
押されても引っ張られても脱落しない確かな接合方法で
建築されて行く。


出来上がると、どこからも見えなくなるシーン。
隠してしまうには惜しい精緻な仕事。この緻密さが、
一人では持てないような大きな石を支えて行く。

サンプル届く。 【編集中】

進行中のマンションのデザイン、
エントランスの外装に石を使う。


石? 重厚さ、高貴さ、表情・・・
様々な可能性と期待を寄せる素材。


素朴で変哲無く積み上げたものの方が、
その重みを良く表現できると考えた。
大切なのは表情、陽を得て深くなるよう、
彫りの深いテクスチャーが欲しい。


石材メーカーの担当者とは何度も打ち合す。
当然、高価な仕上げとなる事が予想され、
石種、仕上げの様々、選定は慎重を期した。


減額調整が必至となっている昨今の建築、
最低でもこれは使いたいという手の内も
用意する周到さで、今回は臨む。



そのサンプルがとうとう届く。
早速、外に持ち出し光を当て眺める。


硬い御影の表面を人が叩いて仕上げたもの。


これを運んで来てくれた時の担当者の、
満足げな顔は印象的であった。
ディベッロパー担当者も納得下さったろうか。


何より自分自身、サンプルを見て嬉しかった。
存在感、強さ、表情の深さ、サスガ!です。






意味も無く事務所に飾っておきたい。と思った
のだけれど、取り上げられるかのように、
今はオーナー事務所に保管されています。


私の手元に在ったのは数時間だけだったからか、
余計に恋しいくらいに惚れてしまう素材です。


規格外ながらも、丁寧に対応頂いたメーカーの
担当者には感謝。
これを特別なものに仕立てられるか?
それはこれから。

模型で眺める。


平面ではなく立体で検討する。
人を置ける尚、良い。眺めると、
問題が随分と明らかになる。


手掛ける空間を考える時、これまでに
携わった建築を重ね合わせて確かめたり、
あれこれ試しては自分のものにする。


こんな時、模型は嘘をつかない。
結局は”人”の居る環境、この空間に
見合う、適切なスケールの感覚を探す。