小窓 【 DOMA / yamanote 】

O邸はローコスト住宅と呼ばれる。しかし、一般的な既製品で造る住宅よりも
ずっと高価な家である。大手ハウスメーカーの住宅も既製品で造られるけれど、
高価なのはブランド料が上乗せされているのだろうか。(余計な発言です。)


断熱仕様はフラット35で言うところの省エネ基準の仕様に準じている。仕上は
キッチンは製作、浴室は造作、床は無垢材のフローリング、建具は製作、壁は
塗り壁と仕様は高い。必要なものを適切に設えることを心がけ設計をしている。



     

スケッチはトイレの明り取り窓のディテール、アイディア段階の一連を並べている。
決定案はより簡素なものに落ち着きそうだ。材料及び手間のコストと施工性を
考慮し検討する。・ ・ ・サラッと窓があれば良い。だが、実はそれが最も難しい。


トイレは小さな空間なので閉鎖的にはしたくない。また落着きある空間であって
欲しい。居心地の良いプライベートな場所、光が要となるだろう。取り込むのは
吹抜けの土間に入り何度も屈折し柔らかくなった光。ほの明るく尖らずに隅を
ぼかすように包み込むようにデザインを試みている。


     

例えばこの写真のような具合。これはDOMAの洗面所の小窓。曇天の雪の朝。
何度も屈折し方向性をなくした光が入り込む。窓廻りの影の付き方を見るとよく
分かるのでないだろうか。晴天の夏の昼間でも終日変わりなく穏やかに光が入り
込む。照明を灯さずともヤンワリと顔を影なく照らしてくれる。これが直射日光なら、
コントラストが強すぎ鋭い影の陰影の空間となり緊張に包まれてしまうだろう。




このような”設計意図”を現場にて明快に示すことは重要であり、またこれを
理解してくれる工事を担当者があることも欠かすことができない。多くの場合、
この小窓の例ならば”光”ではなく”窓”を目的と取り違えて繊細な光の表現は
既製品的な無粋な納まりの前に崩れてしまうことだろう。楽観的に希望しても
”監理”なくしては不可能なことだろう。


監理と管理とは異なる。設計監理という業務はなかなか理解はされていないと
時々実感させられる。求める要求が高くなると必然的に伝えるべき事柄も多く
なる。実施図面レベルではこのスケッチのような1分の1スケールでの思考には
及ばない。監理者と管理者があり、現場の職人があり、予算と時間の内にて
クライアントに提供すべく質を問う。家であれば良いのか、良い家を求めるのか。
その違いはそのようなあまり見えては来ない仕事の中に隠されているかもしれない。



O邸の現場を管理する I 氏は言わずとも気が付いてくれるの人なのでで問題
意識を共有することができる。この意味では本当に助かるし、何より楽しい。
どうせ言っても無理だから、などという投げやりな逃げ場は残されてはいない。
意図を明瞭にしても実現不可能なことを求めては意味がない。と、言うことも
ありサラっとあって欲しい小窓でも、夜な夜な苦戦しつつ楽しくもある。