O邸 左官の現場にて 【 DOMA / yamanote 】

珪藻土を塗った日は二つの左官作業が行われていた。
一つは珪藻土の塗壁仕上げ。もう一つは浴室のタイル
壁仕上げの下地、モルタル左官の仕事であった。




内装珪藻土の仕上げをしてくれた先生こと職人はそもそも
ドライウォールの職人であったという。一般にはペンキ塗の
壁と解釈されるけれど、ドライウォールはとても好きな仕上。


ドライウォールは何と言っても下地が非常に重要となる。
照明を斜めに当て不陸を確認しつつ、徹底して平滑に仕上
げてこそというとても難易度の高い仕上げである。


そんな高精度の下地の上に仕上げられた壁を見ると、つい
光を当てたくなる衝動に駆られてしまう。実のところ、EPの
ような薄い塗幕、出来る職人は多くはないのかもしれない。


珪藻土は一度塗りとしても厚さがあり下地の精度を上げる
必要はないものとも思う。けれども現場はI氏の手配もあり、
職人が丁寧に下地を整えていてくれていた。






写真を見るとパテ処理の範囲の大きさがわかるだろう。
これがクロスの下地なら処理は半分程度となるだろう。
ちなみに、クロスの壁では斜めからの光は厳禁である。


ドライウォールはテーパーボードをビスで止める。クロスは
隅をカットしたボードを釘で止める。その差は歴然、比較に
はならない。丁寧な下地を思うと仕上がりが楽しみである。





現場前ではモルタル左官職人が道具を確認されていた。
お邪魔して見せて頂く。全部で50はあるというコテ達。
これだけ揃うと壮観だ。引き出すと見事に皆違っている。


同じコテを使う職人でも内装仕上げとモルタル左官とでは
全く違う職種である。彼らの扱うモルタルとは素人には全く
手に負えない代物。それこそ熟練を要する仕事だ。



我々の塗った珪藻土は土そのものではなく、製品となった
もの。粘性も高くコテ技術がなくとも塗ることができる。その
おかげで自由な表情を楽しむことも出来る。



     

クライアントの奥様としばし眺めたのだけれど、職人に
こっちも塗ってみるかと冷やかされた。しゃぶしゃぶの
モルタルを手際良く塗られる様は実に小気味が良い。


惜しむらくはこの壁は下地であり消えてしまうこと。ここは
浴室、タイル仕上げとした一面のその下地。現場には実に
様々な職人が集い、その技を惜しまず費やしてくれている。