設計。サッシ施工図に悪戯描きしながら。


『監理』業務は、実はあまり理解されていないように思う。
設計は『計画』、『実施設計』、『監理』と大きく3つから成ります。




『計画』は主に建築の規模、プランや断面、外観を大まかに
定める、正に計画に相当します。




『実施設計』では、その描いた計画図を具体的に図面にします。
見積はここで描かれた「実施図面」を基に行われるため、
この実施設計では「欲しいもの」を描くことに注視することになります。


ここで描かれたものは拾われ、描かれないものは拾われない。
適切に見積に反映されているかは、この図面に拠ることとなり、
仕様、仕上も当然、この段階で表記されることになります。


必要な特殊なディテールもここで表されるものもあるものの、
実際のディテールとは異なる、現場レベルでの検証前のものとなります。




『監理』とはこれらを具体的に具現化する作業と言えます。

例えばこれは、今年請け負ったマンション・デザインの3棟目、
そのある部分のサッシの施工図に悪戯描きをしているところです。


実施図面、平面図を描くスケールは1/50程のスケールとであり、
矩計図(≒断面詳細図)では1/20、1/30程度のスケールに過ぎません。
特殊なディテールはスケールを上げて描くものの、
実施段階で全ての図面のスケールを上げては終わらなくなってしまう。


1/1、つまり原寸世界は『監理』の際に初めて検討することになります。
管理は施工者が行うもの、現場での設計は『監理』となります。


写真の詳細図はサッシメーカーが描いたもの。サッシと絡む周囲は
標準的な納まりが示されるだけであり、このような基本的な詳細は
概ね安全側(≒施工し易い楽な状態)に描かれているものです。


『設計意図』は首尾一貫し、これは計画の時から貫かれるもの。
クライアントとの意思統一は極めて難しくありますが、その困難を克服し、
一貫するヴィジョンを築き上げることは極めて重要な作業となります。


その作業を怠らずに耐えてこの段階に至るなら、
設計者はより適切なディテールを指示することが出来きます。


実施図面のスケールは1/1の世界までを描き切ってはいないので、
施工者はより確実な施工を心掛ける。つまり如何様にも判断できる余地が
残ります。しかし、実際に欲しい空間はもっと先にあるはずです。


たまに載せるディテールのスケッチはこの段階で描いたもの、
貴重な情報であり、最終案を公表することは先ずしないのですが、
どの様な仕事が『監理』なのかを感じて頂ければと思います。




今日は現場で打ち合わせをして来ました。
平面施工図を確認しつつ、気になる部位を検証し、
「ここは、こう納めたい。」と、告げる。


設計者が告げる事で初めて、現場管理者は可能なディテールを
検討することになり、あらゆる部分がその積み上げの中で築かれ、
やがて一つの空間を創ることとなります。


先は長い。長いのだけれど面白い。この面白さは他に代え難い。


.