CAIN


ここ数年は良く本を読んでいる、ような気がする。
特にこの1年半程は古典ばかりを楽しんでいる。
・・・ここ数ヶ月は読書時間が作れずに居るけれど。


100ページあまりの本に1ヶ月弱も要してしまった。
読んだのは有島武郎
小さき者へ 生まれ出づる悩み』という本。


『生まれ・・・』は北海道を代表する岩内の画家、
木田金次郎の事が、実に丁寧に描かれている。


しばしば、美術館で木田の絵に会う機会があった。
描かれるのは、自然の中に発見した”確かな何か”。
その存在感は強烈で、印象はとても強い。




岩内の木田の美術館に行ってみたい。ニセコには
有島の記念館も在るのし、熱いうちに・・・











ニセコで住宅を計画したことがある。資料として、
その際に、有島の『カインの末裔』を読んだ。


北海道の、縄文世界にも通じそうな原風景的世界観は、
それをカタチに直結させることは難しくとも、実直に、
”確かな何か”を棲家に考えるキッカケと出来た。




『 CAIN'S HOUSE 〜カインの棲家 〜 』と
名づけた住宅の計画案。込み入った事はせず、
与えられた条件を敷地に照らし、実直にプランしている。
 

ドマのある室内風景、場所柄、羊蹄山を望む開口を設ける。


敷地勾配を利用して半階上にセカンドリビング +
MBR、半地下にアトリエを、視線高さを違えて
LDKと連続させ、ドマが開放的に結ぶ室内空間。




『風景に呑み込まれてさえ強く生き抜くだろう、
カインの末裔の主人公。カインの子孫とされる
我々が生きるに必要な強さではないかと思える。


羊蹄山に支配されるニセコ雄大な景観、
その美しさは自然の厳しさと対となるもの。
終の棲家をこの地を選んだ者に最も相応しい器とは、
その厳しさと対峙できる、過剰や華美を排した
ただシンプルにして品のあるものが相応しい。』


と、少し気取りつつも、真っ直ぐに取組んだ一つの
成果を、読書感想文に代えて載せてみたい。









.