光、大きさ、質感・・・その1 

光、大きさ(スケール感)、質感(テクスチャー)
建築においける最も重要な3つの要素、
設計はこのバランスを計るものと思う。


実はこの3要素に良し悪しの指標がない。
数値化出来ず、客観的な評価が出来ない。
つまり、所謂「答え」や「正解」がない。
けれど人は『感じる』ことが出来きる。
設計の求めるバランスとは、その建築に
求められる『解』を探す事。その作業は、
「創り上げる」ことに等しい。それが
設計だと、自分は思う。




答えがないので、安易に用いることは出来る。
「明るく広々とした・・・」こんな売り文句を
はしばしば耳にする。『居心地』や『癒し』の
類も同じだろうか、ひどく安売りされている。
しかし、言葉は使えるけれど説明出来るのか?
「明るいとは?」「広々とは?」「居心地とは?」
そういう質問をすれば、発言者は果たして。


この難題な3要素を具体的に解く事、設計毎に
目標として、自分は取り組んでいる。
場所(敷地)の可能性、施主の要望をどう解くか、
誠実に向き合い挑むことで初めて見えるもの、
バランスが得られるものと思う。


やや難しい、感覚的な話になってしまう。
何時も書きかけては止めてしまうのだけれど、
やはり書きまとめたい衝動は抑えられない。







ローコストな建築だった。コストを配分し、
必要な部位に十分な質感を得られるよう考えた。
スケール感(大きさ)は特に大切にしている。
住宅とは違い、非日常となるお寺施設の空間
訪ね来られた方が、真摯に向き合えるように。
要となるのは光。照明に頼らず、自然光のみで
十分な、尊い空間を探し求める設計だった。


実はまだ、あまり多くの写真を載せてはいない。
自身と向き合い臨む、特別な設計であった。




中央の仏様の目線高さは大いに悩んだろうか。
威厳を失わず、しかし威圧することのない高さ。
約28mの長い通路の最も奥にある空間、
人は幾つもの梁下を潜り歩み進み、
この仏様の下へとたどり着く。


座することのある場所、空間の重心を低く保ち、
浮き足立つことのない感覚の大きさに整え、
親しみを覚えつつも、そこが特別な場所で在る
ように、様々な採光方法を組み合わ創る。


質素な建築、しかし不足はなく。尊くも健やか、
凜とした緊張を穏やかに、瞑想へと導ける様に。
装飾性のない素朴なこの建築は、
光、スケール、質感を整えるのみ、最小限の
取り組みで最大の可能性を追う贅沢な設計でした。


写真は自然光のみで撮影。リンクには幾つか
事例写真を載せているものの、肝心な事に、
光や大きさ、質感というのは写真には写らない。


写真を綺麗に仕上ることは出来るのだけれど、
リアルな空間を創るのは、文字通り次元が違う。


写真では綺麗だったのに、実際は落ち着かない。
という経験や、反対に写真ではそうでもないのに、
実際は素晴らしかった!という事もあるだろうか。


先入観は避け、素直に感じるなら誰しもが直ぐに
分る事なので、何時の時代も重要と考えられる
光と大きさ、質感のへ問。