光、大きさ、質感・・・その5


距離感、奥行き感も空間には欠かせない。
33坪に満たないこの住宅、その全長は18.9mもある。
玄関に立つと、ドマを通じてその全長を見通せる。


実際にとても長く遠く、奥に何があるのか目には
入らない。既に違う空間にすら思える奥行きがある。
・・・犬達は相当に加速して飛びつくので注意が必要だ。


最も遠くに見える壁、光を案内した先の記事の通り、
明るく見せている。奥が明るい事、これは大切な事。
もしも、陰湿でお化けの出そうな怖い空間にするのなら、
この壁をいつも暗く陰るように施すと効果的となる。


簡単なルールなのだけれど、空間全体を想像し、
個々のスペースとの調和を考えて計画しなければ、
難しいルールでもある。ある空間で、陰湿感を
感じる事があれば、奥の奥は暗くはないか?を
観察すると良いかもしれない。
適度に陰る事ができれば、謎めいた雰囲気も創る
ことが出来るものと思う。


簡単なルールではあるのだけれど、案外、出来ては
いないルールでもある。
同じ距離ではあっても、空間は明暗により伸びやかに
設えることが出来る。それが自然光の明るさで得た
ものであれば、風通しの良さも感じられるので、
より一層、清潔感をも得る事ができるだろうか。





この住宅は勾配屋根の高みから、室内全体を見通す
視点の特等席もある。そのスペースは天井が低く、
4畳半程の広さしかなく、囲まれている安心感がある。
同時にこの広がりとも連続しているので、狭さを
感じることもない。


狭苦しさのない狭さ。身体に近い寸法の空間は、
例えばトイレなどは顕著であるけれど、実際狭い。
狭いけれど隙間無く自身が把握できる大きさは、
安心感を得ることも出来る。これを閉鎖空間とは
せずに広がりを与える事ができれば最善だろうか。


自分が好んで使うドマは、その意味では住宅にあって、
特に広い空間となり、多くはそこに大きな窓があり、
庭へと連続している。居室はこのドマに面してあり、
用途に応じて大小を調整し、閉じる事無く広がる様に
心が得ている。それが空間の基本。


後は必要に応じて、例えば子供の部屋の個室化する等は、
建築の寿命に対して短いと想定出来るので、その時に
可変できれば足りる事と思う。閉じた部屋をつなげる
一般的な構成は、後でつなぐ事がとても難しい。





居室からドマ、庭へと連続する空間構成とは、
小さな空間から外の大きな空間へとの連続性を
計画すること。リビングに大きな窓があっても、
外と繋がっているのかは疑問を感じている。
特に北海道の寒さや雪のある環境では、内は暖かく、
外はさむい雪世界では唐突な断絶感を得てしまう。


写真のような具合であれば、リビングからの眺め、
一見、どこからが外で、どこまでは内なのかが
分らなくなるようには見えないだろうか?


例えばリビングに面する寝室が扉一枚で仕切られて
作られる公私の区分等は、とても落ち着かない。
同様に窓で仕切られた空間が連続すると言われても、
なかなかそうは認識する事は難しい。


何れも婉曲的に、やや曖昧さを内包し、ゆるりと
繋がる方が自然と受け入れられるのではと思う。