光、大きさ、質感・・・その6

床に座って心地良い空間、実現するのは実は難しい。
和室の様な重心の低い空間が本来は望ましいと思う。
和室を洋間風に設えてしまい、一見デザインは良く
見えるのに、穴の底に座っているような居心地の
悪さを感じる事が、実は少なくないように思う。


座した時の低い目線、一段高い床の間、長押や建具、
その高さなど、なるほど思う仕掛けがたくさんある。
大は小を兼ねるとは言う。過ぎたるは及ばざるが如し、
とも言う。身体の感じる最適な心地には、適切さが
何より肝要であり、大は小を兼ねる事ができない。


写真の事例では、オーナーがお持ちの仏壇がかなり
大きなものであったので、納める箱が大きくなって
しまってはいるのですが、写真とは反対側にある
掃き出し窓や飾り棚など要素をどこに集め、
どのような照明空間にするか等、悩みました。





LDKと一間となる和室は特に高さの設定は悩ましい。
障子を閉じると一つの部屋に、建具を開くと仏間が
現れる仕組みのこの部屋、普段はオープンに使われる。
閉じた時にも違和感のないよう、それがLDKから
みても違和感のないように考える。この住宅の高さは
繊細、全体のバランスを何度も検討しつつ取り組む。




大きな空間、立って歩く、椅子に座る、大勢が集う、
という性格の空間から、扉で仕切ることなく座する
心地の空間へ導く事はできないか?お寺の施設では
そのような取り組みをする事ができた。

ここは会館や本堂から連なる場所、扉で一々仕切り、
違う場所とするのではなく、連続することで一つの
ストーリーが描けるように全体を計画している。
300人規模の人が集う場所から、一人で座せる空間
までをどう結びつけるのか?実に悩ましい設計。


天井の高さ、梁の高さ、壁の高さ、高窓、掃き出し窓、
それらの採光と、目にする、手にする部分の質感の差、
それらを組み合わせて様々に変化させて導いた最後の
場所は、座して静かに出来る空間に仕立て上げる事が
出来たと思う。実際に使われているシーンを影から
眺め、それまでの旧施設との違いを思えば、一つの
ストーリーが出来たのではと思う。


などと、思いつきを書いてみる。