光、大きさ、質感・・・その8

『石』高価である故になかなか使う機会は無い。
質感は高く、なるほどと思う重厚さ、探せば、
様々な表情の石に出会える。


表面仕上げには一般に本磨仕上、バーナー仕上が
あるだろうか。時に、叩いて仕上る事も出来る。
ノミ切り仕上げ、これは又は荒ビシャン仕上げ。


ある建築の外装を石と決めた。そこで様々な石を
集めてみる。描いたイメージに合致する石が
なかなか見つからない。そこで思いついたのが、
叩いて仕上ること。
叩くと石は割れるので、十分な厚さが必要になる。
予算には限りがあるので、厚い石材の手に入る
ものから選び出す。選んだのは比較的安価な、
変哲の無い御影石。これを二種類の叩き方で
サンプルを用意し、オーナーと相談した。


サンプルを外に持ち出し、陽を翳し、日陰に置いて
その表情を確認する。濃色の石の方が良いかと
思っていたのだけれど、叩くと明るい石質が出て、
案外白ける。少し明るい方の石は、叩いた分だけ
深みを増していた。その後も様々に眺めて悩み、
ついに決定する。


その石を使った建築、外観。同材を本磨仕上げと
したもの、他種の3種を外壁には組み合わせる。


見積もり段階で消えてしまうのではと恐れていた
ものの、どうにか削除されずに残り、採用できた。
個人的な好みではあるけれど、高価さよりも、
人の手の跡が残る材の方が好きである。
労はそのまま表情となり、高い質感を作り出す。
2階建て高さのエントランス、重厚でありながら、
雁行する構成を軽快に見せたいと考えた。




石は60mmの厚さ。小口は見えないものの実際に
見るとその厚みが実感できる。素材は軽薄さも
滲むもの、安易な取り組みは写真では良く見せる
事が出来ても実際は軽薄であることが少なくない。




とある事例、シート張りの木質パネルを使う。
石、タイル、塗壁の中、ポイントとなるパネル。
これが貼ったものに見えてしまうと残念であった。


芸術的な仕上げを要求する事は不可能なので、
施工者が確実に出来るもので、粗の見えない
製作方法を様々、現場にて検討した成果。
目地、目地棒、端部のステンレス板との組合せ。


安価な既製品ではどうにも出来ないのだけれど、
安価な素材や材料は面白くもある。コストを
下げる選択肢、けれど掛かる労は果てしなく。
ローコスト建築が難しい所以。


石の後にローコストのお話、支離滅裂だろうか。
質を求める方法にも様々がある。どんな建築に
しようか?施主と打ち合わせる中でイメージを
温め、適材適所を選び出し、見積もりに組み込み、
現場であれこれ悩み検討し、実現となる。
出来上がった姿が納得のものであるように。


買ってきて組み上げるだけの既製品ではないので、
どれも人が実際に造っている。建築一つ一つに
その過程はあり、その成果が期待される。
少しでも労を知って頂けると、職人等は笑顔も
見せず、「俺にできないとでも?出来て当然。」と
いう顔をして喜んでいたりする。



上写真の事例はこのように仕立てられました。