光、大きさ、質感・・・その7

質感についても書いてみたい。

この春に竣工した建築、その壁。これは感動的だった。
塗壁、好んでよく使う。塗った壁は何でも好きである。
自身で携わった建築、最も最初に出会った塗壁は
ペンキの壁、ドライウォール。漆喰や珪藻土も好き。
何れも自分自身で塗った事もある。漆喰は痒かった。


写真の壁、装飾性の塗壁。最も一般的に使われる材料
なのだけれど、その塗り方には様々な方法がある。


多くは平滑、又はコテムラ程度の仕上げがコスト上も
採用し易い。この建築では質感ある仕上げを期待し、
多くのサンプルを製作し検討をしている。手前は
平滑仕上げ、奥が採用のもの。一度塗り上げた後で、
コテで押さえ、仕上としている。


現場所長、職人に確認の上でOKを出してくれたものの、
いざ塗り始めると、押さえ方に職人の個性が出てしまい、
それが顕著であることが判明する。既にオーナーにも
了承を得ていたので、結局、一人の職人を頼り、施工を
することとなった。それそうとう、気持ちの篭る壁。
工程を気にされる現場所長、しかし、引き下がる事が
できず、その職人に合わせて養生、足場が組まれた。


出来あがった空間の過半を占める塗り壁は一人の職人の
手によって仕上られたもの。加減の難しい仕上げ、
これをムラ無く全ての壁を仕上げ切っている。


何が良いか?光への繊細で俊敏、明快な応答が素晴らしい。
ダウンライトに間接照明、壁面ブラケット照明と天井から
吊るしたペンダント照明、複合する照明空間がこれほど
綺麗に見えるのは、この壁のおかげでもある。


受けて陰影を伴い、適切に反射して室内へ光を返し、
見せる、見えない光を相当に手伝う事が出来ている。


写真では分らない類の最たる事例。クロスでは絶対に
際限は出来ない質感。けれど、その場に立てば、それが
如何に素敵かは直ぐにわかるのではと思う。


ブラケット照明のような、壁を直接照らし、壁の輝きが
室内の明るさ感を生むような場合、壁は既に照明器具の
一部、反射板ともなるので、非常に重要。一枚目の様な
しっとりとした輝きは、そうは求める事ができない。


質というのは感じるもの、頭で理解するものではない。
内装に安価な張物で作られた、木に見える、石に見える、
塗ったように見える類の既製品を用いると、それが模造の
質であることは誰しも分るもの。その素材の薄さや軽さ、
そういうものまでが透けて見えてしまう。
貧租な具合は室全ての質をそのレベルにまで落として
しまう恐れがある。安価な製品は注意深く用いなければ、
他にどれほど高価な素材を採用しても、安価な質にしか
見えなくなってしまうかもしれない。一部の高価な材が
全体を底上げするよりも、一部の安価な材が全てを
引き摺り落とす事の方が容易です。




塗壁が好きなのは、光を良く受けて応えてくれるから。
コテムラの仕上げの壁も、壁に平行に近い、なめる様な
陽射しを受けても耐えら、しばし眺めたくなってしまう。


これまで自分自身も施工に参加し、様々を塗っている。
決して上手くはないけれど、プロには真似できない
味ある壁として眺めれば、耐えられるでしょうか?


ある住宅、クライアントご夫妻とご友人と塗る。
この壁は西日を受ける壁、なめるように差し込む陽を
想像し、光の話で書いたように、光るようなムラを
造るコテ運びを実践している。塗り手の技術不足は
指摘せずに眺めれば・・・これを逆方向にコテを運ぶと、
影が強くなるので、印象的な仕上げになるだろうか。


沈み行く陽が最後に室内でキラキラ光ると良いなと思い。
この壁に平行に、なめる様な陽射し加減、クロスでは
その無機質さが際立つ上に、普段は見えない継目までが
目立つことになるだろうか。
珪藻土の塗壁では、極小さな土の粒子ですら長い影を
帯び、表情を豊かにしているように思います。



写真の事例はこの住宅。建設費削減のためにセルフ施工。
一階まわりは我々素人集の手作業ですが、綺麗です。
それに、何と言っても楽しい一日でした!