間接照明だけで過ごせる家・・・M_house 

先夜に書いた記事、IKEAで思い出すのはこの住宅。
当時、特に親しくさせて頂いていた大工さんの家。
既にプランの決まっていた彼の住宅、それが輸入
住宅としてカナダから送られてくるというもの、
相談を受けて内装その他のデザインに携わる。


出来る事は限られてはいたものの、その頃は
若さ故の無謀さもあり、様々に取り組んだもの。


その思案と成果は、それまでに思い描いていた
事の実践であり、今も揺るがずに継続している事。
私の建築に対する姿勢そのものであると思う。


限られた中で出来るのが空間を作る事、その中で
特に取り組んだのは照明空間だった。
昼光で空間を作る事が建築の命題、照明空間は
設計・デザインの都合で如何ともし得る。


自然光はこちらの希望や要望、都合を聞く事がない。
正しく臨まなければ、光ある空間を創造する事は
出来ない、絶対の建築要素。光はそれほど重要で、
私の設計においては常に最難関の問題でもある。


対して照明は、不足を補うことも可能な、都合良く
設える事が可能なもの。写真写りの良い建築写真の
多くは実は、人工照明、補助照明に助けられている。


都合良く人工照明を使う事は当時も今も好まない。
この住宅で取り組んだのは『間接照明』であった。
間接というのは面白く、実は、その効果は難解。
今はソフトも優れていて、明るさ感をシミュレーションする
事も出来るのだけれど、そうであっても難しい。


この住宅では、間接照明だけで生活空間を創る、
そういう取組みをした。もちろん、大工さんの
希望に合致した故に。




最初に1/50の模型を作り確認した後に結局は
1/30までスケールを上げた模型を制作し、
これに電球を仕込んだ、手の込んだ模型を作る。
このお正月にアトリエを整理した際に、この
模型と久しぶりに出会い、その仕事量を見て、
・・・再現できる気がしない。


最も、今の仕事量を当時の自分が想像出来る
わけもないのだけれど、故にこの時から継続し
築いた『経験』の大きさを実感する再開となった。


模型は実際の質感に似せて仕上げて製作する。
羽目板の天井は近いテクスチャーの紙を選び、
ドライウォールとなる壁に似せてスプレーを吹いた。


模型では十分な効果を確認でき、イケル!と
確信し、GOサインを出す。その際の間接照明を
担う模型に仕込んだ電球の写真がこれ。


竣工時の写真。IKEAの家具はまだ未設置なのだ
けれど、ダイニングには一枚目にあるペンダント
照明器具同様の器具が灯っている。


模型でのシミュレーション、補う経験値と想像が、
具現した創造。些細な住宅の空間に見えるかも
しれないのだけれど、切妻屋根をそのまま内観と
する住宅の夜を、間接照明だけで過ごせるだけ
十分にする取組みだった。


その成果は実は、明るすぎるくらいであった。
手のひらを翳すと、裏も表も影のない不思議な
光の空間が出来上がっていた。とても印象的。
照明が見えない空間なのに新聞が読める明るさ。


この時から、明るさを定量的に自分自身で
把握して設計する切欠を得ているのだと、
改めて写真を眺めて再確認をする。


その間接照明、目線では見えないのだけれど、
高いところから写した一枚。切妻屋根を天井と
する平屋の住宅、その主照明を望む。



写真は、当時親しくしていた写真館のK君に、
わざわざ白黒フィルムで撮って頂いた竣工写真。
スタジオ撮影専門の彼を連れ出して撮らせてしまう。


写真は、間接照明の主たる役割を果す天井です。
節のあるパイン材を張り詰めた天井は、考察の際、
イケルかもとまず思う素材であった。どこまで
機能するのかを模型も使い検証した。


写真では暗く写っているのだけれど、これは、
写真の特性故の事。


総じて見ると、随分以前の取組みを鑑みて、今も
同じ事をしているだと思い知る。様々な取組みは
あるのだけれど、自分の光への取組みは変わらず。








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