足跡。

この春は週末毎に西岡の水源地へと足を運ぶ。
とあるオーナーから三月末に春の知らせが届き、
自分でも探しに行こうと訪ねてみれば、未だ雪。
一週毎に風景の変わる様に改めて興味を覚える。


そんな中出会ったこの足跡、主は誰だろうか。


次の機会には、まるでパーティーの後の如く。
比較的大きな足跡、犬狐狸は同じ仲間、
4本の指が前にくる。この足跡は5本が前を向く。


水源地には管理棟があり駐在者がある。
棟は新築されて訪ねる人も多く賑やかだ。
聞けば、水源地にはテンの居ることを知った。


テン?聞いたことはあるけれど札幌に居るとは!
北海道でもまずお目に掛かる事のない野生動物。
それが車で15分程の場所に生活圏があるとは。


テンにも警戒されない位に自然の一部になりたい。


写真の足跡、候補はそのテンの他にもう一つある。
ラスカルだった。アライグマの。






数年前、函館の現場に通う最にたまたま昼過ぎに
岐路に着く事があり、下道を通って伊達を過ぎ、
室蘭に差し掛かる手前で思い立ち、寄ったのが
北黄金貝塚。ここはお薦めスポットです。



その時、施設前の広場で何やら作業中の集団あり。



質良い黒曜石があれば自分でも作れそうな、
そんな石器を自ら使い・・・



鹿の皮をなめしている風景であった。
北海道に住んでいた人、一万年以上前から、
2、3千年前位まではメジャーな道具だったはず。
石器と言っても、用途に合わせて様々に整えられ、
ガラスに近い黒曜石は鋭利でもあり、刃物全般に
使われていた素材。


博物館では見るものの、実際に自分で割った事も
あるのだけれど、使っているのを初めて見た。


伊達は噴火湾沿いの縄文探求が盛んな場所、
学芸員も多い。この時、私の好奇心は駆り立てられ、
若い一人の学芸員を捕まえてあれこれ話を聞かせて
頂いたのでした。


ところがその方、帯広の畜産大学で野生動物を
研究していた人との事。骨格標本製作の企画も
ありますので、是非どうぞとも案内を頂いた。


お聞きした話に・・・やっと最初の足跡の主の
話になるのですが・・・この学芸員の研究の
対象にアライグマがあったと記憶している。


一見、狸に似ているものの、狸はイヌ科の動物、
足跡が違うように種が違うらしい。北海道にも
狸は居るのだけれど、成体の体格は倍程にもなり、
明らかに狸の生活圏を脅かす存在なのだとか。


人事のようにも聞こえたのだけれど、こうして、
身近な自然の中にその存在を示すだろう跡を見て、
実に感慨深い。


アライグマは北海道の野山なら天敵はまずなく、
気性は荒く食欲旺盛で貪欲とも聞く。
市内近郊でも比較的豊かな自然のある西岡水源地、
そこで警戒心を感じさせる事なく遠慮もなく、
水場を、散策路を歩き、人の生活圏の先と重なる。


そのうちに街中で出会うこともあるのだろうか。


子供の頃にクワガタを採っていた森で、
いつしかカブトムシが当然のように採れるように
なっている故郷、同じことが起こるのかと疑えない。


連鎖の頂点に近い位置に立つ外来種が恒常的に
在るとなれば、何が起こるのだろう?
木の上の鳥達の巣、元来それを狙っていた蛇、
蛇から逃れていただろう小動物、それら小動物の
餌になっていただろう昆虫達、様々な仕組みが、
今後数年、数十年を経て変わってしまうのかも
しれない。