春、その1

この春は豆に、冬の頃から西岡水源地に通う。
銀世界からグレー、緑多くなる変化は、湿地に
流れる水量と生まれる淀みの変化にも等しく。


雪解け水が水位を上げ、この時期だけに流れ込む
淀みが毎年気になる。流れ込む時は早く、
継続時は静かに動き、やがて流れが断ち切れ、
真に淀み濁り、消えてゆく水のたまり。


この写真がこの春一番のお気に入り。
雪解水本流の外れ、止まっているかの如く静か。
でも、少し流れている。静かな動性は水盤の、
昨秋の植物跡に乱され幾重にも小さな渦を巻く。
眺めれば、雲の切れ間から覗く陽が移りこみ、
周囲の森の影が水盤下の枯葉を垣間見せている。


緩やかな流れとは、スプーンでタッチした様な、
アイスクリームの表面のような、穏やかさ。


水は透過と反射、時に水そのものを見せる。
静かな水盤はその何れをも映し出す。


水場の影は底を強く見せ、明ある場所は反射が強く。
気付く事ができれば不思議な同居を探す事が出来る。



淀みの表情は実に豊か。離れればまるで鏡面であり、
寄れば濁る水の表情。やや動きのある水盤は、
突き出た植物の淵の張力の水の輪があり、
埃を浮き上がらせつつ、僅かな陽も映えている。


影は水盤の底を見透かし、


焦点を合わせると森を精密に写している。


緩やかな流れは反射映像を僅かに揺らがせる。
この具合、見事な様。身近にある抽象世界。
これを発見できていればモンドリアンに成れた。


春の雪解水、流水から生まれた淀み、淀みから
切り離された小さな溜り、移り込む森の風景。