【 Moai in ny Story vol.18 】 実施設計とは?その他思う事を記します。

『図面』とは「クライアントの要望を建築の言葉にしたもの」であると思う。
この図面を元に施工者は積算し施工をする。この図面製作を『実施設計』と言う。
クライアントの要望を直接、施工者がカタチにする事は不可能。

しばしば「標準化された」と書いているものは、既製品のコーディネートによる建築の事。
今は床もドア等の建具も水廻り一式も、壁材もすべてに既製品があり、
大手建材メーカーのショールームに行けば、一式を一日で選ぶ事が出来、
選ぶとディテールも全て着いて来るので悩むことなく建築する事が出来る。
ハウスメーカーや建売住宅等はこの標準化があればこそ実現可能になっているのだろう。
この場合の設計者はプラン製作と確認業務が仕事、図面は『計画』図があれば足る。
・・・ハウスメーカーの実施設計で1ヶ月を要した!とは聞いた事がない。


設計契約とは委託契約。工事契約は請負契約。
クライアントは設計者に設計を「委託」し、施工者に「請負」させ建築を目指す。
委託と請負の違いは検索頂くと様々、理解頂けるものと思う。


「クライアント」という言葉も実は難しい言葉。
おそらくハウスメーカーの施主は「お客様」なのだと思う。
私の設計では施主は「クライアント」で頂かなければならない。
何事も選べば済むのでなく、決めて頂かなければならない。
決めるには様々な事を考える必要があり、そのための情報を私は提供し、
この情報を図面にし、施工者へと伝え、要望を具現することを生業としている。


契約書の約款には様々が記されているのだけれど、契約が維持できない場合の事の他には、
問題のある場合は双方の話し合いにより解決を計る事を基本とする旨が記されている。
「建築」は創られるもの。造る事を含め創るためには、クライアント、設計者、施工者の協調が欠かせない。
関係に優劣があるのでなく、三者はジャンケンのような関係と考える事も出来る。
責任を負う以上果たすのみ。時に施主の意に沿わぬ提案すらしなければならない事もある。
正しく話し合える関係が何より望ましい。


「お客様」だから!と言われてしまうと実際、何もできなくなってしまう。
一つ一つ創り、造り、決め進む作業は、実際にはとても困難であり、何より分らない事が多いものと思う。
けれど、それを克服して行かなければ、例えば【 MoAi in ny 】のような27坪の二世帯住宅は不可能と思う。
これはこのブログで紹介している全ての建築に当てはまる。どの建築も様々な決断の上に始めて得た成果。
何が出来たのかを数年かけて理解頂くものもある。設計とは、その決断を助ける事が仕事だろうか。



と言う事で、やや堅い話を書いたけれど、【 MoAi in ny 】は2016年1月初めに実施設計を終える。
図面を確認頂き、いよいよ、非常に現実的なコスト、建設費算出のために施工者へ見積依頼となる。
写真は当時の図面原稿全37項。確認頂いた時の書き込みの他、見積調整時の調整内容も記していて、
今はもう必要はないのだけれど、手放しがたい図面。改めて眺めると年季が入っているなー