【 Moai in ny Story vol.19 】 見積依頼、見積調整、業者選定。【編集中】

実施図面が出来上がり、いよいよ見積依頼となる。
実は、概算見積が予算を上回っていた事もあり、依頼した施工会社と相談の上で了承を得、2社に見積依頼をする事とした。
決めた施工会社と続くのが望ましいのは間違いないのだけれど、コストが合わなければ実現はない。
私自身悩んだものの、そもそも覚悟を決めての設計、無理をお願いしました。見積依頼は2016年1月中の事。


実施設計案は、計画案からは大きく変遷している。規模は変えられないもののコストを抑える工夫を凝らしていた。
まずスキップフロアーは取り止めている。先に案内した模型の通り、当初意図した変化のある空間は得られており、
加えて合板類を仕上げに用いる仕様など、この時点で既に減額代を大きく使い果たすローコスト仕様に達していた。


ここまでの9ヶ月間に築き上げた想いを実現できるのか、無に帰すのか、勝負の時を迎える!
約2週間の積算期間、2社からは質疑を受け応答し、待つ。見積書が届いたのは2月初めの事。
今改めて、その時の見積書を眺めると・・・背筋の凍る記憶が蘇る。


見積書はクライアントにも届いている。さぞ驚いかれただろうに減額できないかに思案をされていた。心強い。
ここで私が根を上げれば建築は止まってしまう。そもそも、これまで一度足りと楽だった事はない。さて・・・


届いた見積書は付箋を貼りながらじっくり観察することから始める。
拾い落としや重複がないかを調べ、高価過ぎるもの、安価過ぎるものの他不明点も調べてゆく。
この時点では2社共に高価であり、つまり、『見積調整』がスタートする。



二つの見積を表欄に整理し、比較検討を行いつつ、減額可能な項目の洗い出しをはじめる。
項目毎に記載額の大小の過ぎるものを確認すると同時に他の減額可能な項目を拾い集め、
先ずはこれを整理し、再見積もりを依頼することにした。


見積調整は基本的にこの繰り返しとなる。見積額と予算が合致しない場合はプランの変更も後に検討を
する事になるのだけれど、【 MoAi in ny 】はこれ以上規模縮小はできぬ背水の状況、果たして・・・


見積を依頼した2社は初めてお付き合いをする業者ではあったのですが、
頂いた見積書は誠実で信頼を寄せるに十分なものであった事に心から感謝しております。
適切な見積書であればこそ、調整も可能。選択肢は必ずある。


見積書への質疑と修正減額案の提示は2月中、修正見積が届いたのは2月後半の事。


ここで2社に大きな差が生じていた。当然双方には同じ条件で再見積を依頼している。
現状では更に調整が必要なのだけれど、その差を考慮し、これ以上のお手間をお願いするか悩み、
クライアントと相談の上で1社に絞り調整を続けることとした。


選定外とした建設会社には丁重にお断りの電話をさせて頂く。これは実際、本当に心苦しい事です。
建築は施工者がいなければ始まらない。建築の常ではあるものの御協力頂けた事にお礼を伝えました。


選定した一社とは概算を依頼した施工者。ここではS工務店とする。
見積を頂き、その後に現場代理人としてその長くお付き合いする事となる自分をO氏とします。
名を隠す必要はないのですが、個人的な印象や感想も述べるかもしれませんので。


S社O氏の見積書、実はとても私好みのものでもありました。
単価はやや高め、しかし項目は少なく整理されており、何を造るのか設計意図を理解するもの。
そのスキの無さには痺れますが、信頼を置ける内容でした。この様な見積出会え、嬉しい。


見積書には感想や考え等は一切記載されない。あるのは項目毎に数量と単価、その総額が記されるのみ。
そのような寡黙な分厚い書類なのだけれど、その数字の羅列には意図が隠され意思が感じられる。
語らずとも語りかけてくる事もある・・・追い込まれた私の心境のせいかもしれませんが。


2016年3月は調整期間となり、数度の打合せ、再見積を製作頂き末頃に成果を得ることが出来た。
例えば、家具工事を大工工事にすればコストは落ちる。そして質も落ちる。
落とさぬにはどこまでを大工工事とし、どういう仕様、方法するかなど綿密に打合せる。


クライアントへは施工者製作の工程表を沿えて提示、晴れて『見積調整』を終える事ができた。
つまり、業者決定。そして「工事契約」と相成る・・・建築出来ると言う事だ!