秘密は本当に秘密・・・謎でしかない。


訪ねたのは随分昔の事なのだけれど印象的。
ノーベル賞の晩餐会が催される場所だったはずの、
ストックホルム市庁舎。本当に印象に強く残る。
設計はラグナール・エストベリ。
ガイドツアーでは変人扱いされ笑いを誘っていた。


学生時代、当時既に古いモダニズム建築でもあり、
建築史では登場しても話題には上り難い建築だった。
なのに、何故かここは訪ねるべきと感じていた。
何を感じたのだろう?秘密がそこに隠されていた。


確か、寝過ごしたハンブルグの朝、駄目元で駅へ
向かうと、幸運にも始発の電車が遅れていた。
厳格なドイツ鉄道!?も始発で発車出来ず。
デンマークコペンハーゲンで一日を過ごして
夜に夜行列車でスウェーデンへ向かった。
デンマーク含めて訪ねたかった北欧の地。
夜更け頃、列車ごと船に乗って海を越える、
なんとも不思議な旅の朝がストックホルム
市庁舎は窓からも見え、テンションが上がる。
駅を出て地図も見ずにここへ向かった。
なるほど、これは凄い!という迫力の、
朝一番に描いたスケッチ。
まだ旅慣れずスケッチも何だけれど、
感じた感動は描かれているようで好きな一枚。



モダニズムのシンプルさはあるものの、
優美さに溢れ、至る所にある彫像も素敵。
これは数段の小さな階段の手摺柱上のもの。


彫像の台座にもレリーフだあり、こんな具合。
何かしら謂れのあるだろう聖人だろうか?
しかし、手にするのは魚。地域性だろうか。
見上げるとスウェーデン代表ユニフォームにも
ある?大冠や月や星もあり、面白い。


秘密・・・非常に印象的に見える塔が、
なぜに之ほど迫力を持って迫ってくるのか?


種はこれだ。塔の足元に立ち見上げるとわかる。
塔の中途で傾斜している。僅かだけれど、
舐めるように眺めると直ぐにわかる。


ギリシャ神殿の柱の中央が膨らみ、全体を眺めると
反り凹み貧相に見えない工夫、エンタシスと同様、
似た工夫が隠されていた。これが秘密。


日本のモダニズム建築にも、もちろん寺社仏閣にも、
様々な工夫がある。印象が作られる秘密がある。
実は案外単純な方法であることもある。


ストックホルム市庁舎ではの方法は簡単だった。
遠めからは判別できなくとも、それが唯の一直線に
見えていても、視点を得ればご覧の通りだ。


が、この秘密を解いたところで再現が出来ない。
どの辺りでどの程度の操作を施せば、こんな立派に
そびえる事ができるのだろうか?

効果を得られなければ単調な直方の塔にしかならず、
過ぎれば過剰に見えてしまうだろう。
これを成した設計者の技量を推し量る事が出来ない。


つまり、これこそが秘密。
操作の手法は簡単だけれど、どうすれば効果的か、
これは誰も教えてはくれない。教える事も出来ない。


自然でも観察しながら、自身の感受を高め、
感性に負いつつも探求し、得た成果なのだろうか。
気付いた当時は「秘密をみつけたり!」と思った。
それを自分が成そうとする今、恐怖の出来事となる。




今は観光地の一つにも数えられるらしい。北欧は
スウェーデンストックホルムを訪ねる時は是非。