羽化に立ち会う。

風の冷たさが秋を予感させる夜更け、
ふらりと中島公園を散歩した。
公園の薄暗い道、うごめく虫が一匹、
街中でクワガタ発見か!?
寄ってみると馴染みのない虫だった。
でも、直ぐに分かる。セミの幼虫だ。


道端をヨチヨチとそれはもう遅々と進む。
ふと手を出すと、手に登ってきてしまう。
そのまま、近くの木に移そうかと思うも・・・
アトリエに連れて帰ってきてしまった。
どうしよう?


羽化に立ち会う。ここまでくれば安心だろうか。
夜中にまじまじと、観察させて頂いた。
とっても不思議な生命のとある瞬間だった。



翌朝、まだ動けぬセミではあるけれど、既に、
成虫の姿だ。動けないのでじっくり撮れた。



図鑑で調べると、『アブラゼミ』の様だ。
ミンミンゼミのような、まるでアイヌの文様を
思わせる綺麗なセミと比べるなら、とても地味。
羽は透明でなくくすんだ色付きだ。
が、その羽を良く眺めると実にオシャレ。
配色とグラデーションの具合から、遠近が
誤魔化されているかのうような絶妙さもあり、
葉脈のような骨格の立体感、骨格の外に伸びる
風切羽状部分の凹凸の立体感といい、
光加減に応じて本当に絶妙。
いくら眺めても何がどうなっているのか?
理解が及ばぬくらいの強烈な造詣が在った。


無事に羽化、成虫に変態できた、うれしい。
親になり子を見守るかの様。本当に無事で何より。
何かあんれば連れて来た事を公開しただろうし。


カサカサと音を立てて位置を変え、
私が「飛ぶの?」と聞いた時、
横目で見られていた気がした。


飛び出すと、振り返りもせず一気に遠くへ。
中島公園とは反対方向だったけどね。
無事だろうか?日中、泣き声しないかな?
メスのような気がするので泣かないかな。
ふらりと立ち寄ってはくれないかな?


無事で。