観察記

虫なので、嫌いな人もあるかもしれず、
出来るだけ小さく写真は載せてみる。


連れ帰ったセミ、どこで羽化させようか悩む。
足掛かりになる壁面・・・カーテンにした。
最初、気に入らない様子で降りたがっていた。
布をあれこれ動かし、何とか登らせる事に成功。
それまでずっと動いていたものの動きが止まる。


微動だにしないのは、羽化準備に入ったから
だったらしい。



気付くとパカッと背が割れている。



そこから一気に体を持ち上げ、頭をのぞかせる。



次いで足を抜き出す作業のため、仰け反る。
腹部の先端のみで体を支えている。
落っこちないか不安でならない。



一休みの後、腹筋で体を再び持ち上げる。
足先の爪は既に硬いらしく、抜け殻に足場を
見つけ、体を固定する。



折り畳むように仕舞われていた腹部を抜き取る。
よいしょっ!という動作具合。



脱出成功、体全体が殻から出て落ち着く。



ここで初めて、折り畳まれていた羽を伸ばす。



羽の骨格が直ぐに立ち、成虫の姿に。真っ白。



空が白み始めると同時に体は色付いて行く。



どんどん色付く。夜は明けてゆく。



日が昇り朝の頃、成虫に。



体内の水分を除くために排泄、硬化し、
体が機能するまでは、安定的位置変更は
するものの、あとは全く動かない。



この後、カサカサと音を立てて写真左手へ移動、
そこから翻して一機に初飛行で遠くまで立つ。







■疑問想像1
幼虫はどうやって木を探すのか?


夜行性ではなく、幼虫の殻を被った状態では、
目も触角も機能は不十分のはず。
予め登る木を決めて出て来るのだろうか。
それとも、闇雲に這い回るのだろうか?
まさか地上に出てからどの木にしようかと
探すのだろうか?


木に出会えず闇雲に這い回り、力尽きる
ものも多数、あるのかもしれない。




■疑問想像2
完全変態であるカメムシ目セミ
サナギ期間がない。でもきっと、
この夏に!!と春先にスイッチが入ると、
6月中頃には地表に近いところに部屋を作り、
体内の排泄物を排泄し、最後の脱皮をして、
最終形態になるのだと思う。
その時期がサナギ期間に相当するのではと想像。
地上に出る時には既に成虫の体が収まっており、
幼虫の外皮は保護皮膜程度の状態になっている。
体力は羽化に最大限をとっておくだろうから、
地上を動き回るには不十分な体力、能力しか
ないはずだ。


実際、外界を判断する様子は乏しく、動作も、
右足を下ろすと左足が上がり、左を下ろすと右が、
という感じの、ゼンマイ仕掛けの玩具の如く。


幼虫最終段階から羽化直前までの不確かさが
とても気になる。




■疑問想像3
羽化手順の的確なルーチン化


これは見事だった。羽化開始から90分程で
羽展開までたどり着く。相当体力を消耗する
だろう大変な変化と行動は、手順を間違えば
取り返しが付かないはず。


殻から抜け出す大作業はもちろんなのだけれど、
例えば足が抜けなければ全てが滞るだろうし、
先に羽を広げれば脱皮作業で痛めてしまうだろう。
羽の織り込まれ方も見事だし、正に完璧。


世の中のセミの全てが、この行為を訓練もせず、
一発で決めてしまえる能力があるのだから驚く。



■質疑想像4
体の乾燥と硬化


羽化前は水分を多く体に含んでいるのだと思う。
なので柔らかい。羽化し順次硬化を始める際は、
乾燥が進むのだと思う。
硬化した体や羽は、再び殻に収まるよう折り畳む
事は出来ない。
羽だけなら、数時間で乾燥は出来そうな気はする。
けれど体表や体内器官はどういう具合なのだろう。
湿潤に織り込まれた状態から、数時間で硬化が
可能とは、これも計画されているのだろう。


ちなみに、昆虫は、細胞への酸素共有を血液に
寄らない生物。気門を通じて体内に巡らした
管を通じて直接、空気を送る。
羽化ではこの気門、管も対象になっていて、
殻から伸びる白い髭状のものがそれに当たる。
そういう器官も乾燥硬化時には使われているの
だろうか。




■質疑想像5
セミの飛翔能力。
空中で獲物を捕獲するトンボ程の技量はないとして、
遠くまで飛ぶような風に乗る体系にも見えない。
でも、大きな羽がある。速くは飛べそう。
初フライトの羽ばたきで数十メートルを飛び、
更に羽ばたくと直ぐに見えなくなった。
一度の飛距離は、体内に取り込める酸素量が
ポイントになるのだろうけれど、3階窓から
眺めた感じだと、200〜300mは余裕そうだった。


その気になれば500mくらいは飛べるのか、
それとも1kmくらいは飛べてしまうのかな?
生涯飛行距離は10Km〜30Kmくらいには
なるのだろうか?


とりあえず、飛んでるセミを人が足で追うのは
不可能だと思う。





良く見る、唯の昆虫なのだけれど、
一晩の観察だけで不思議をたくさん見せられた。
行動原理やその場の判断、様々な仕組み、
非常に簡単なもののはず。
外界から情報を得、整理し、判断をする人間を
はじめとする生物に対し、少ない情報に的確に
反応する事で生きているはずの生物だろうに、
人間の理解を全く超えている。
少しでも理解が出来たら、ああも見事なスタイルに
学べるところがあるのではないか?
興味は覚えてしまうんだな。