板金。

現場代理人は本当に適切な方、板金の仕上げについて、
設計者が求む仕上がりを計りかね、解決のために、
板金職人を現場定例の時に呼んで下さった。


現れた職人は二人、職人らしく自信に満ちる方々。
ただ、設計者先生に呼ばれて、でもあったので、
ややぎこちなくもあったかな。


初見の職人さんとの対面はいつも緊張ある楽しい時間。
「先生」を気取って上からモノを言う事も出来るけれど、
所詮、現場は職人の手によるもの。高圧的では意味がない。
先ずは彼らの力量を計りたいと考える。その上で、
最上の仕事を求めたい。求められれば、より楽しい。


いつしか事例は幾つか持っているので、お見せする。
好みの事例も、そうではない事例もある。


響いた一つは、最も基本となるハゼ組みの仕上げ写真。
やや逆光で板金掴みの起伏が強く陰影に出る写真。
つまり、それは粗がもっとも映り込むものなのだけれど、
その事例はその状況でも実に綺麗だ。


このくらいの仕上げを求められる?


と言う要望は、強烈だったに違いが無い。
その事例は本当に親身に職人が携わってくれたもので、
おそらくはその凄さを誰もが気がつかない程に凄い。


求めたのは丁寧な仕事。技術に裏付けられた丁寧な様。
そして、その仕事に誰も気が付かない程の仕事。
そう告げると、現場代理人含め一同共に笑う。


分かる人だけは気付き、寄り眺め、感心する仕事だ。


これまでの描いたスケッチのデータは何時も携えていて、
この時、その場でその時に描いたディテールも案内した。


職人二人は、一見しただけでそれを把握し、要求レベルを
飲み込み、提供できる仕事を確認すべく、取り組まれた。
当日に急遽呼ばれ、請われ、暗くなり始めた頃に引け、
暗くなった頃に現場にはサンプルを作って戻ってきて、
やっと自由時間を得て現場をさ迷っていた私が、
電気業者につかまり懸念事項を解決したのを眺め待っていて、
間髪入れずに捕まる。


ヘルメットに付けたヘッドライトで誰?だったのだけれど、
作ってみたので見てください、と・・・おや?もう?


要求は15mmで、としたものの彼らは20mmで折って来た。
けれど実際に現場に納まる様は実に綺麗で線が通っていた。


誰にも気付かせない技術に裏付けられた丁寧な仕事とは、
確実に「線」となる納まり。要望を彼らは読み取り、
適切な仕事を提供してきた。優先順位を間違わない仕事。


15mmなら確かに優れるものの余裕はなく、歪む可能性を
否定出来ない。20mmとすることで確実な仕事としたい。
職人の回答の確実さを買い、了承する。


そういうやり取りを現場代理人は認めて下さり、この方針で
現場は進む事になった。一時の出会い、要求なのだけれど、
プレッシャーは掛ける事が出来た。後は答えを待つのみ。


毎週水曜の定例で見る事は告げているので、果たして。


悩ましい箇所は幾つかあるので、今後数回は議論するだろう。
けれど、仕事を終えた時にまだ若いのに職人たる彼はきっと、
私が居る事に気付いているのに、何も言わずに去る様だけを
私に見せるんだろうな、と思う。


その時、どうだ?見ろ!俺の仕事を!という心の叫びが強烈に
響くんだろうな。そういう職人さんに出会えたので、楽しみ。
感じた事、思った事、感謝は現場代理人に伝えます。


され、彼らの仕事が楽しみ。