カンナ掛け。

亡き父の親友を訪ねる。父がいた頃よりも既に付き合いは長い。訪ねる時は
もう一人の父を訪ねるような心持だ。父が残してくれた財産なのだと感謝して
いる。ただ、いつも自分自身が友人でありたいと懸命でもある。






このおじさんの子供達とは歳が近く「お兄ちゃん」と呼ぶような関係でもある。
出会った頃は子供だったけれど、今は皆が既婚者だ。ちなみに妹さんの旦那
さんは宮大工だ。この日はおじさんが睡魔に襲われ、彼と話し込むことになる。


        

何時しか大切な宮大工の道具が展開しだし、何事かが始まる。結局、梁の切り落とし
材だという丸太の四半分の断面を持つ1.5mほどのヒバ材が居間に持ち込まれ、
カンナ掛けをしていた。酔っても手際は流石、室内はヒバの香りが立ち込める。


        

カメラに写真が残っていた。酔ったおじさんがどうやら撮ったらしい。恥じ入って
公開すると、刃先の具合を確認している随分、偉そうなのが酔った自分らしい。


果たして何本飲んだのか?という頃には、彼の道具を扱う貴重な機会を得て、
自分もなぜか居間でカンナ掛けをしていた。 ・・・気持ちヨカッター!






後にヒノキ材も登場し、凹カンナで手摺状に丸める実演が始まる。その手触りは
実に心地よく、手に残るヒノキの匂いは酔いを醒ますほど鮮烈だった。