建具   ■BUTSUGWANJI vol.2

建築には様々な工事区分がある。木造建築でもその数は少なくない。
基礎工事、木工事、板金工事など。その一つに建具工事がある。


住宅の建具、昨今は既製品を用いることが多いのだろうと思われる。
大手建材メーカーなら、内装仕上材まで揃えてラインナップされている。


建具とは、ドアや窓などのことなのだけれど、製作がやはり面白い。
製作のメリットは、室内のデザインに応じて必要な計画が施せること。
既製品では、規格や枠、納まりが制限され、煩い仕上げは免れない。


製作すると当然コストは上がる。大工と似た作業にも見えるのだけれど、
同じものを複数製作するなど、工種、工程は異なり、道具も違う。人が
触れ動作するもの、高い施工精度が要求される高価な仕事となる。




自分の携わる建築では、今は製作するように心掛けている。取手や
開閉の構造、納まりを考えることは大変に難しいことだけれど、その
甲斐のある仕事を求めることができる。






     


以前、携わったお寺にて和室廻りの建具を計画する機会があった。
簡略化はしたのだけれど、一応、吹き寄せて障子をつくる。
この時にお世話になった建具職人とは今も親しくさせて頂いている。


先日、電話をすると奥さんが「小学校のグランドにリンクが出来て
いてね、子供が滑っているのが見えたからと、スケートに行ったんだ
から!」と不在であった。御歳77才と聞く。


先週、ラーメンをご馳走になったのだけれど、ぺろりと平らげていたし。


小さな町の建具工場、数年前に工場の看板は下ろしたそうだ。3次元
ルーターを備えるもう一社もあり、今は修繕程度の仕事しかないらしい。
心配していたのだけれど、出来るかどうか?それは聞くまでもなかった。


お寺の増築工事では、高価な建具を使える情況にはないのだけれど、
その一部に彼の技を期待したいと思う場所を用意できそうだった。
再び、一緒に仕事が出来るかもしれないと思うと、非常に嬉しい。


彼の最後の仕事、花道を用意してやろう!くらいの勢いで訪ねたのだが、
お会いすると、何と言うか、若輩者が今後とも、お知恵と技、気概を
御貸し下さい、という具合であった。


余計なお世話など自分にはまだまだ出来そうにはない。






しかし、何としてでもこの職人に難題を突きつけたい。
職人をその気にさせるだけの仕事とは、考えただけで緊張が満ちる。
こちらがどれだけ高いものを望み得るのか、その一点に掛かっている。


完成予定は7月末、それまでに練りに練り上げねばならぬ。