きらりの授賞式がありました。



先週末、きらりと光る北の建築賞の授賞式があった。


建築士事務所協会の催すこの企画、その発起人となった方が式後に
私を見つけるなり指差し「良い」と。これまでで初めての空間だったとも。
「感じる」ものだったと話して下さった。


見栄えする建築が評価されるのはわかるものの建築はそれだけではない。
実ある空間を発掘する、そのような趣旨から既に10年以上もこの賞を
守られている。・・・ネーミングの「きらり」、なるほど。


現地審査での審査員の方々の様子はあきらかに、「建築が好きだ。」
ということが醸されていた。その熱い視線はオーナーも感じていたらしい。



自分はこれまで数多くの建築を見て来ている。十分ではないとしても、
既に少ないとは言えないほどに。自分が惚れるのは、やはり「空間」だ。


見栄えならある程度は真似が出来るし、再現性も高い。しかし、空間は
真似が出来ず、再現は難しく、何より、誰も教えることが出来ない。
自ら”知る”しかない。


空間は写真には写らない。写真では「空気感」とも表現できるけれど、
リアルな空間とは一対一で呼応するわけではない。


実は誰しもが感じる”感覚”そのものに支えられた、最も身近なな存在で
あるにも関わらず、空間は得がたく、創るのは特別に難しい。
(※故に理解のない建築が多勢であるのは事実だ。)




DOMA/yamanote】は素朴な建築かもしれない。
生みの苦しみ、見積調整での苦労はそのシンプルさに磨きを掛けている。
例えば、ドアはトイレのみで成立できるプランにまで昇華している。
減額によりドアを減らしたのではなく、
ドアのないプランを成立させることで減らす・・・という具合。
無駄のない設えは、結果、極めて隙のない空間に至っている。





機関誌にて受賞理由が述べられていた。その寄せて頂いた文章がとても
嬉しい。自分の建築を誰かに表現して頂くのは初めてのことかもしれない。
以下、本文を掲載させて頂きます。


DOMA/yamanote」と名づけられたこの家は、細長い建築と木塀に
囲まれたコートからなるコートハウスです。いたってシンプルな構成です。

写真だけでは一見閉鎖的な印象とも受取られますが、実際に現地に
立つと計算され低くおさえられたヴォリュームは人を疎外することなく、
コートの上にはここだけ気持ちよく青い空が広がっているのがわかります。
建築は吹抜けの土間”DOMA”という空間によって1階と2階、外と内が
有機的に結び付けられています。このDOMAを要(かなめ)として敷地を
含めた建物全体が開放感の高いひとつの空間を構成しています。

初めての訪問にもかかわらず、心地よい居場所を容易に見つけることが
出来たのは、壁や床といった建築パーツを目新しい技術でデザインした
からではなく、作者が空間そのものをデザインしようと試みたが故でしょう。

緻密に練り上げて配置された開口から自然光を巧みに取り入れ、
壁や床のテクスチャーを媒介にしてそこここに豊かで美しい空間を
表現したこの建築は「きらりと光る北の建築」賞にふさわしい作品です。






持つと重厚で驚くくらい立派なプレートを頂いたので、届けに行ってきました。
最近増えた住ネコ、ジロと一緒に記念撮影。・・・そんなに不思議がるなよ。