風景の中の建築




函館からの帰り道、中山峠不通を知った。
前日には無事だったのに。そういえば・・・


さざ波が全面に立つほど道は水に沈んでいたし、
走る場所に迷うほど木々枝葉が散らかってたし、
ワイパーを跳ね上げるほどの突風が吹いていた。






函館へは車で行く。荷は多く、時間が自由に
使えるので。楽な距離ではないのだけれど。


睡魔と闘う高速道路の利用区間を短くするために、
決まって中山峠を越える。羊蹄山を眺め、豊浦で
海に会い、森で駒ケ岳を横目にする好きなコース。


中山峠が使えないと道選びは非常に困難になる。
諦めて高速道路を使うか?
伊達から美笛峠を越えて支笏湖経由か?
苫小牧西から支笏湖を抜けようか?
5号線を海を見ながらのんびり走るか?
倶知安から赤井川を抜けようか?


あまり使ったことのない赤井川コースを選ぶ。
おそらく最も長距離、長時間ドライブとなった。





朝里から札幌湖を通り定山渓に抜けたので、
ニセコ、キロロ、国際スキー場前を通過する、
スキーを積んでおけば良かったコースだった。


道中、車は少なくドライブには快適な道であった。
その道はまだ雪の多く残る風景、農家の納屋なのか、
朽ちた建築の散在する印象的なものだった。


パッチワークのようにカラフルな板金が貼られた、
水平垂直の壊れた建物が雪原の風景の中に佇む。


写真は羊蹄をバックにした家屋、又はバラック
一つ一つ、その痕跡を眺めてみたくなる。




故郷の町にも似たような風景は、たくさん在る。
人の居る、人の居た痕跡が建築に表出する。


妻面を道路に向け、斜面に建つこの建物は、とても
お気に入りだった。そのヴォリューム感といい、
新築では出来ない自然発生的な様が印象的だった。


写真は雪のある日、斜面を登り写させて頂いたもの。


雁行する屋根、勾配の違う増築部分、それらを結ぶ
三角形の屋根パーツ、柱割とは関係のない側面の
暴風板・・・夏には更に幾つかのパーツが備わって
いたのだけれど、台風で飛んだらしく、そのままの
常態で冬を越していた。


気付くと何かが足されていたりもする。
生きているんだ、と感じたことが何度もあった。


風景に溶け込む存在と思えるほどに古くから在り、
同化することなく風雨に耐え建ち、
臆することなく手を加え続けられている。


人が生きるとはこういう事なのだろうか?などと、
考えてしまうこともある。






志賀直哉の暗夜航路を読んでいる。残り1/4程。
何となく影響を受けている気がします。
・・・あんな綺麗な文章が書けると良いのですが。