ルイス・ポールセン・・・照明器具

建築、空間は光、スケール感、テクスチャー、
どう呼ぶかは様々ながら、3つ要素から成る。
私は光が気になって仕方なく、自然光採光は
設計において特に大切に取り組んでいる。


自然光採光は絶対に誤魔化しの出来ないもの、
故に使いこなすのが非常に難しい。


その補助となり、夜間は主となる照明器具、
人工照明を考えるのも好きである。
間接照明は設計者の工夫になるけれど、
器具そのものは選ぶ事になる。


ダウンライトのような機能性重視の製品は、
数値判断も出来、種類も豊富な事から今は、
適当なLED製品を選ぶ事が出来ると思う。


悩ましいのは、光源をLED化した際に、
電球光源とは違う光になる機種の在る事。
好んで使っていた比較的安価故で多灯に
使っていた国内メーカーのLED化機種が、
光のデザインを忘れている事。
これは許せない。過渡期とは言えど、
光をデザインしない器具が全盛だろうか。


昔から信頼しているメーカーが在る。
光がデザインされている本物の照明器具。
個人的にはポール・ヘニングセンは好きだ。
その製品を担うルイス・ポールセンは、
これまで多くの住宅で採用をしている。


先日、家具でお世話になるカンディハウスで
ルイス・ポールセンのセミナーがあるとの事、
案内されたので勢いで参加してみました。


終った後でルイスさんの担当者を捕まえて、
あれこれお話をお聞きする良い機会でした。


アルネ・ヤコブセンのAJシリーズ、
そのブラケット機種の光源部分を見る。
ガラスシェードは均質ではなく陰影を帯び、
柔らかさまでがデザインされたもの。
LED化では中央が明るく周囲に行くほど
影を帯びる様の再現に苦労したらしい。


約3年の月日を経て作られたのが、
LEDチップに被せたレンズ部分。
これが傑作なのだけれど、でもどうも、
デンマークの人って呑気だ・・・
三年も掛かるの?ってポツリ一言も。


点灯時のもの。シェードを被せるとおそらく、
電球光源の機種と比較しても分らないかも。


ポール・ヘニングセンのPHランプ多灯の図。


これは流石に綺麗な風景であった。
デザインは半世紀以上は前のはず、当時の電球は
フィラメント位置がバラバラだったらしく、
ソケット部分がネジ切りがあり、電球の高さを
調整できる仕組みにより調整をしたらしい。
それが今も残る。どうも電球型LEDは製品により
最も明るい部分の高さがまちまちなので、
今も欠かせないのだとか。進化しているようで、
実は変わらない世の中。

ルイス・ポールセンも光のウンチクを語らぬ
製品をラインナップに加えるご時勢、この
新製品はヤコブセンの器具のように陰影を、
光源面の柔らかさをデザインしたもの、
『SilverBack』のペンダントタイプ。


まもなく竣工する帯広の住宅使う予定の器具、
エニグマ。この器具のダイニングテーブルからの
高さ設定を迷っていたのだけれど良い機会だった。
これもテーブル上60cmが基本です。


実際、台上60cmはかなり低めだ。PH5なら
威圧感があるかもしれない。
けれど、ダイニングのペンダントは低い程良い。


建築史に残る建築、これはデンマークの教会。
訪ねたのはもう随分前の事になる。
『グルントヴィ教会』1940年 P.V.イェンセン・クリント設計


室内は荘厳、浮かぶ船が不思議でしばし滞在。
教会は様々見たのだけれど、光の柔らかい、
不思議な光景は今も鮮明に印象に残る。


セミナーのスライドでも案内があり、
当時の私が気付けなかった工夫を知った。
レンガを積み上げた建築、その表面をやすりで
けがき、傷をつけたらしい。受照面に風合いを
与える事で光を優しくする、北欧らしい工夫を。


なるほどと感じ入ってしまう。
人知は求めると再現なく、あらゆる取り組みが
出来、その行動の痕跡は今も辿る事が出来る。
そして、実感を伴う経験を自分も出来る。
知る、嬉しい機会のセミナーに参加でき感謝。


ただ、昨今のデンマークの建築に同様な光の
扱いがあるのかと言えば、そうでもない様だ。
実際、日本に居る自分が日本の光を知るか?
と問われれば、谷崎潤一郎の『陰影礼賛』的な
空間など、北海道人はそもそも知らぬもの。


受け継ぎ大切にする気持ち、知り学ぶ機会を
得る事は欠かせない。同時にこれを今どう
生かすのかも考え取り組まなければ。



デンマークは初めてセラの彫刻知った
ルイジアナ美術館が印象に強く残る。
楽しさ溢れるバーゼルの美術館とは異なり、
圧倒的に美しいジャコメッティーの彫刻に
出会える美術館がある国。







※案内した教会の設計者クリントの名前から
 照明器具メーカーのレ・クリントを思い出す。
 調べてみると彼のデザインがそれであった。
 使った事のある照明器具、かつて訪ねた
 遠い国の建築、点と点が繋がる瞬間を経験。

 
 改めて考えると、なるほどとも思う。
 教会はクリーム色のほぼ単一レンガのみで
 築かれたもの。ドイツの表現派の流れを
 組むように見えて、実はとても静かで禁欲的、
 質素でむしろ素朴、清い印象が残っている。
 レ・クリントの器具は折紙のようなシェードが
 特徴と言えるだろうか、印象が重なります。