【 bookshelf 】のドマ

『ドマ』のある設計した住宅、そのドマは条件も状況も異なり、使われ方も光景も、眺める風景も当然違う。
それは場所の特性を活かし、住まうご家族のために設計した住宅の個性を映え、違う事が当然なのだけれど
、実は「在る」事が重要で、あれば、場所の特性もご家族の個性も映える空間であるように思う。
どの住宅の『ドマ』も私は好きで、訪ね見せて頂く際は、実用上は余剰に近い性格のスペースでもある故に、
活用の具合で状況や状態を判断できるかも?


寒冷地の住宅は、建築の『内』と『外』が明快に区分される。用いる窓を床からの地窓、天井までの窓、
窓枠を消すディテールを用いてみても、断熱サッシで区分される空気までは開放できず、
断熱区分が強く室内と室外と別けてしまう。窓が大きければ開放的!なら困らないのだけれど、
それほど安易な問題ではなく、ではどうすれば”外と繋がる”住宅を設計できるのか?問い掛け得た一つの答えが『ドマ』であった。


【 bookshelf 】のドマ風景。
ドマが活かされると、外との連絡が容易になる。私の用いるドマは土間とは異なり、むしろ縁に近いのだけれど、
目的は外への近さ、近い空間で在る事、”室内に取り込んだ外”がドマと考え設計をしている。
実際、下足も可能な室内空間であり、無垢の木床の居室に対してドマはコンクリートの叩き仕上やタイル等仕上げとし、
しかも一段低く床レベルを設定することで基礎高故の地盤面との高低差を緩和させつつ外へと導き、そして外を室内に導く。


コンクリート叩き仕上の床は荒々しさもあるのだけれど、既製品に拠らない室内の「質」には実に良く沿い、
合うものでもあり、気に入っている。割れは入るのだけれど、これは躯体ではなく表層のもの。
この『ドマ』は多機能空間でもある。基本的には床暖房を施し、大きな開口故に免れない寒気のコールドドラフトに対応し、
庇はあっても冬は陽射しを良く受けて熱を吸収し蓄熱、夏はドマまでは陽射しの進入を許すものの居室空間の防波堤となり、
換気の基点となる場所であり、要は室内環境保全維持の要となる空間としている。ドマが正しく機能すれば室内環境は安定する。

と、あれこれ機能性能の多くを担わせているのだけれど、室内により外に近い空間が在るという事実が他に変えがたい変化をインテリアに与え、
それが生活を潤す豊かさに至れればと思い描き設計をしている。

実際、こんなドマが室内にあれば使い方も様々に想像が膨らむ。ドマのある家はどの家も個性的で、おそらく瓜二つの家であっても、
住まう人が異なれば必ず、個性が映ろう空間になるものと思う。

【 bookshelf 】はかなり大きな規模でもあり、『ドマ』はその空間全体を繋ぎ一体化する重要な役割があり、
その実距離の長さにより二世帯を可能にさせる要であり、薪ストーブのあるドマ端は室内展開の物語の端であり、
この家の個性なのだけれど、これが住まう人の生活に息づき、根付けるかは大きな設計課題であった。
10年経過の様は、それが達成されている姿であると信じたく、とりあえず、最早なくてはならない場所に至っていて、
あれこれ行き来して改めて確かめてみたものの、不思議な場所であった。

奥のジジのスペース、子世帯LDKへ来るにはドマを伝うのだけれど、一段低い場所から訪ねる様を思うと、
ドマは室内と言うよりは、通から連なろ路地の様であり、公私区分でいえばパブリックな属性のだけれど、
よりもっと公共に近い位置に感じられた。越えて居室部分の床に上がる時はどうも、
「お邪魔します。」と一声掛けなければいけない気がしてしまう。