【 Moai in ny Story vol.0 】 設計とは?を書いてみる。

ファイルは5冊になった【 MoAi in ny 】。
設計図書 :実施図面は34枚製作
ファイル1:計画
ファイル2:見積書関係
ファイル3:監理
ファイル4:監理時スケッチ
ファイル5:確認業務


住宅一つを設計するとファイルはいつもこんな具合に積み上がる。
書類は基本的にPCデーターで保管してるので、本当は積み上げずとも良いのだけれど、
積み上げた方が仕事の残る感じがするので、惜しげずに積む。
現場の写真は多く撮り、これはPC保管。スケッチブックもある。

【 MoAi in ny 】は、まとまり良く仕事が出来ているので、設計開始時からの事を、
今後しばらく整理の意味も込めてブログで案内してみたい。
【 DOMA / 道南の家 】を過去にまとめた事がある。自分の仕事を通じ、設計とは?を記してみる。





以下、設計について説明をする機会に話す事を長々と。
建築の設計は大きく3つに区分が出来る。
【計画】 建築のプランを含め構造規模を策定、方針を検討する。
【実施】 実施図面、所謂「設計図」を製作、仕様を含め図面に記す。
【監理】 着工から竣工までの間、設計意図を現場に伝える業務。
 

この3種の業務を果たして初めて、意図する建築が実現できるものと思う。
建築工事は、構造、規模、用途や建設地域により、工事種別や消防等設備の違いはあるものの、
それが小規模な木造建築であっても基本に変わりはない。


公共の建築なら、不特定多数の利用者が円滑で安全に利用出来るものである必要があり、
民間企業の事業を主体とする建築なら、効率や経済性なども強く求められるものと思う。
店舗等であれば比較的短いスパンを想定し、その都度時代のスタイルを反映するだろうか。


比較すると住宅建築の特徴は「特定個人の要望に応える建築」に尽きるものと思う。
想定する性能は様々、長期間の持続が可能で、住まう人の満足を求める建築であると思う。




設計の基本は、お話をお聞きし、要望を整理し、これを建築の言葉=図面とし、実際に工事を監理する事。
住宅は小規模であるとしても、工事種別が少ないわけではなく、どの一つを取っても細部まで意図を通したい。
効率や経済性、性能等は欠かせない観点ではあるけれど、それだけでは十分ではなく、何に価値を置くのか、
優先順位はクライアントの数だけ様々が考えられるもの、その意味では実に難しい類の設計と言える。


ハウスメーカーや建売住宅の場合は、既製品を使う事を前提として標準化、或いは商品化することで
要望に応えるよう取り組まれているものと思う。コストの上で大きなメリットを得ることも可能で、
また品質を保つ事も出来るだろう反面、細部までを検討する余地はなく、設計の自由度は制限される。
しばしば「自由」とは使われるものの、実は自由には範囲が設定されている事も事実ではないかと思う。


公共のもの、民間事業のもの、店舗等の多くは利用開始時期が明らかであるのが常、故にある期間内に業務を終える。
住宅の場合も同様なのだけれど、設計期間は比較的長く、これまでの経験から自分の場合、最短でも1年近くに及ぶ。
昨今、特に難しくなっているのは予算と見積の整合だろうか。見積調整期間が長くなる傾向は否めない。
見積もりがまとまらなければ施主と施工者間で工事契約は出来ず、着工に至れない。としても予算には限りがある。
5年前と比べると現在の工事は2、3割UPというのが正直なところ、加えて職人が確保できるのかの条件もある。
設計上の工夫で質を落とさずコストを減ずる、ローコストな手段探求にも時間を要しています。やや愚痴っぽい?


ということで、住宅は小規模なので確認業務の書類は少ないものの、考える事はとても多く、結果、
最初の写真のファイルのように積み上がってしまう。
人のスケール、身体に最も近く、生活の様々に関わり、器となる住宅を考えると一つ一つ細々、描き出すと止まらない。
住宅設計はとても難しく労力も多いのだけれど、達成した時に得られる喜びは他には代え難い。