光  【 DOMA / bookshelf 】

     

Bookshelf、塗壁が終わった工事終盤、11月ある日の午前中の風景。
まだ生活のない室内に満ちる朝の光は今も強く印象に残っている。
長い吹抜けの土間空間、光に満ち、美しく輝いて見えた。

     

やがて薪ストーブが据え付けられる正面の壁は朝から日を映え、
とても印象的なコントラストを見せていた。光を映えるような
コテ運びを注文した塗壁をしばらく眺めていたことを覚えている。


こんな壁を毎日見られるなら良いだろうなと思う好きな壁。


光。

     

Bookshelfの土間は南面の窓が集約されている。帖数なら20帖程に
なるだろうか。その大きさ故に土間の床暖房の役割は大きい。
光は予想の通りでもある。南側の光は映ろう。開口面積はとても
大きいけれど、日差しに左右される南側はやはり陰影の世界となる。


この陰影の世界、生活するには変化の大き過ぎる空間でもある。
南側に窓を設けると、大きな窓があると室内は明るいか?と言えば
それほど単純な話とはならない。日差しの大小は実は明るさではなく
単に眩しく熱いに過ぎない。高輝度はグレアを生み不快ですらある。


必要なのは日射の強烈な光量ではなく「明るさ感」に尽きる。土間
正面の壁は光を受けて輝いて見せている。光を直接見るのではなく、
光を受けた面を見せるのは一つの工夫となる。視角の中にその輝く
面が、それが綺麗に光を映える面であるならばより心地よく光を
感じることが出来る。塗壁で作られる面は中でも上質な質感を伴う。


     

Bookshelfの2階は全て土間の吹抜けに面してある。ここは日差しの
差し込まぬ空間だ。土間に差す、庭に差す強烈な光は傾斜する天井
面を伝って反射しここに届くことになる。


写真ではコントラストが強く暗く見えるかもしれない。どのような
空間なのかと言うと ・ ・ ・


     

このような具合となる。この住宅の最も北側のスペースは北向きの
ハイサイドライトを備え、日が昇り沈むまで季節を問わず常に変化の
少ない落ち着いた空間であり、土間とは正反対の光環境となっている。


直射日光は真正面で受けると10万ルクス程度。非常に強烈な強さだ。
大して天空光は薄曇の空が5万ルクス、快晴の空が1万ルクス程度。
どんより曇った暗い日でも5千ルクス程度とされている。
採光計画はこの安定した空の天空光を如何に用いるかが重要となる。
そして自然光を取り込む設計とは最も難易度の高いものでもある。




土間は日差しのウツロイを楽しみ、奥の生活空間から眺め楽しむ。
2階は天空光を得て終日、季節を問わずに落ち着いた環境を楽しむ。
Bookshelfはそんな様々な光を生活に合わせて取り込む住宅でもある。