DOMA/道南の家 設計 vol7 「2度目のプレゼンテーション」

計画とは基本設計のこと。どのようなことがプレゼンテーションされるのか?
”DOMA”の事例より紹介させて頂きます。

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再開後に迎えたプレゼンテーションは2009年のGW、最初の祝日となった。
ギリギリまで計画を粘り、それから模型の製作を開始する。完成したのは
朝、そのままこれを携えて車を走らせ、午後の打合せに駆け込む。


屋根は3次曲面となっている。道路側に塀を築いて遮り、内にプライベート
な広がりをつくり、そのまま函館山までを望む一部2階建の住宅。
(立体的に提示したく、このように模型かまたはパースを作製します。)


プランはI型とし車庫を組み込み計画している。前回提案した2つのプラン、
L型は車庫を南側へ配置しなければならず気難しいプランであった。故に
I型プランをより洗練させ、屋外の物置や塀などの外構も計画を進めている。

立面と断面を計画する。西側から東側へ屋根は徐々にせり上がる形状が
断面で示されている。最も高い位置に2階が納まっている。


提案では概算表を添付させて頂いる。前回の打合せでキッチンや浴室等
事例を紹介しイメージを確認させて頂いたので相当な設定となっている。安価なものを望まれてはいない。実施に当たっては難しい内容でもある。


全体の主な工程を案内させて頂いた。希望される引渡しの時期を勘案し
工期、設計期間を設定し、見積もり依頼や業者選定などの説明をする。


設計最初のステージである「計画」、そのプレゼンテーションとはこの
ような具合となりました。この後、設計契約についてお話させて頂き、
後日締結しました。次いで第2ステージ「実施設計」が始まります。


自分は4年前のスリムで無駄のないプランへの想いを実は断ち切れずに
いました。その想い、実はクライアントご夫妻も感じておられました。
必要となった一室を巡り最善のプランを求めています。しかしその想い
はやがて大きな転機を生み出すのですが、きっかけとなる大事件が!
・・・続く。


※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程を紹介しております。

DOMA/道南の家 設計 vol6 「暫定プラン」

開発行為に関わり、建築物の配置を示すために暫定のプランを作成する。
2週間と短い期間で用意し4月初めに第2回目の打合せとなる。


・・・本来は最初の提案までにもう少し期間が欲しい。十分なイメージを
温めるためにも、じっくりと考え深めて取り組みたい。


「計画」とは規模や構造、平面や立面を検討し、概算や工程をまとめること。
そして、もう一つ大切にしているのがクライアントと共有するイメージを築く
こと。それは今後の共通の判断基準となる。





この短期間、新たに増えた一室に大いに悩まされ、2つの案を提示すること
になった。提案というよりも検討課題、予算に対する規模の確認、プランや
仕様等についての確認作業となる。

L字はどうだろう?というクライアントの言葉より、一案検討を施してみた。

もう一つは当初の印象のままI字のプランとなっている。


あまり見せたくはないプランなので小さく表示。混迷してるな・・・。
やがて求めたプランまでの変遷を観察できるので有意義とも思う。

  

※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程を紹介しております。

DOMA/道南の家 設計 vol5 「再開」

昨年2009年の春早い頃に連絡が入る。打合せのために道南へ走る。
初めて訪ねた時と同じ雪の残る早春の風景は気持ち良い眺めでもあった。

クライアントはこの4年の間、提案したプランを大切に温めていて下さった。
年内には住みたいとの急展開をお聞きし俄然忙しくなることが予想された。
つまり設計は実施を前提としたスケジュールを考えて進める必要がある。


敷地は開発行為が必要になるなどの条件が加わっていた。事前調査や
所轄行政庁との打ち合わせ、引渡し希望日、工事期間や設計期間の調整、
各種手続きなどスケジュールを簡単に算出する。結構、忙しいぞ。
家具、家電が増えている。持ち込むものを確認しつつ撮影、採寸、品番の
チェックをする。冷蔵庫にTVにオーディオ、ジャーに電磁レンジ・・・


改めて、所要室を確認する。一度提案しているだけに要領良く運ぶ。しただし、
部屋が一つ追加された。・・・後にこの一室に大きく悩まされることになるのだ。
加えて世間話をしつつ、好きな映画、良く見る番組、日々の日課、趣味趣向を
お聞きし、住まいのイメージを探す。既存の住宅のなかで実際に確認しながら
生活スタイルを確かめ、理解を深める。



具体的な予算も想定されたので帰りの車の中では、頭は一杯であった。



※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程を紹介しております。

DOMA/道南の家 設計 vol4 「延期」

プレゼンテーションはお会いしてから1ヶ月ほどが過ぎた頃となった。要望は
明快で簡素、条件は少なく自由度は高い。条件は緩く見える・・・しかし、純粋
に求めることが出来る!という意ではこれほど難しいものはない。


お見せする時の鼓動は、聞こえてしまうのではないかといつも思う。喜んで
くれるのか?興味を抱いてくれるのか?なにより楽しんで頂けるのか?
不安と期待の対面でもある。遠慮は全く不要、想うままをお聞きしたい。


プレゼンテーションは健やかに終えることが出来た。どう思われたのか?
実はそれを聞けるのは2005年のこの提案から4年の月日を経ることになる。


・・・後の返事は「延期」であった。


渾身の一案、延期の連絡はとても残念であった。ただ恨むことではない。


嬉しかったのは2009年に再開し再会した際だった。長い月日、このプラン
を大切にし、温めていて下さったこと。本当に気に入って下さりイメージを
膨らませていてくれたこと。こんな嬉しいことはない!


その揺るがぬ強い想いは設計者の責任の大きさを知り覚悟を決めさせる。
そして”楽しさ”への飽くなき追求が始まる。
・・・続く。

DOMA/道南の家 設計 vol3 「プレゼンテーション」

提案はとても素直だった。クライアントは敷地のことを最も良く知り、生活の
一部とされている。その魅力は彼等の印象とも重なるように私は感じていた。
凝ったデザインなど恣意的な計画はこの敷地の魅力の前では無意味だった。


そう、敷地の広がりに許されて建築は長く伸び、広がりを享受すべく展開
を試みる。一文字に東西に伸びる”土間”を要とするシンプルなプラン。

敷地の圧倒的なスケールを前に人の住処を心地よく築くこと、実は非常に
難しい。大自然に放り出された感の方が強く怖いくらいでもある。シンプルな
プランは潔くその水平に伸び、地に沿う。全長26mを超えている建築だ。

住まうのは2人、終の棲家。間仕切りる必要すら希薄。ただ、来客は多い。
プライバシーを守りつつ、南面する土間を通じて広がりを室内に与えて行く。
どの部屋からも函館山が見えるように。


断面計画はとても気に入っている。シンプルで伸びやかに空間を作ることが
できる。計画当初から冬至夏至の南中高度を記しつつ何度も何度も検討を
重ねていた。採光、日射取得の制御と調整、土間築熱(ダイレクトゲイン)、
換気、眺望、暖房、照明、構造・・・最も簡素で無駄のない素の空間、素性が
良く高い性能の空間を求めて計画を計る。  

DOMA/道南の家 設計 vol2 「考える」

紹介建築の最大の条件は”場所”。その可能性をどこまで引き出せるのか?
観察し、理解を深め、可能性を探る。敷地なしでは何も始まらない。



”予算”、最も現実的な条件となる。予算内でなければ全く無意味となる。
どれだけ適切な計画が出来るのか?・・・得意とは言えないが。



そして”要望”、求めること。この3つから建築は考え進めることが出来る。



始めに敷地を描き出す。次いで予算を勘案して建築可能な規模を算定し、
先ず”ヴォリュームの計画”を始める。敷地をどう利用するのか?建物を
どう配置するのか?大まかに眺めるながら適切なカタチを無作為に探る。



同時に室内の計画も大まかにスタートする。居室やその大きさか、各室の
性格・・・パブリック(公的)な居間や玄関やプライベート(私的)な寝室など
をどうレイアウトするのか?”ゾーンニング”を行う。



肝心なのは答えを急がないこと。可能な限り様々なパターンを検討する。
効率の良いものも悪いものも見つかる。この段階ではむしろより遠回りし
より多くの様々なパターンを模索する。



最も考え込むのはそのイメージ。お聞きしたカタチには直接結びつかない
ものの中に多くはヒントが隠されている。”DOMA”の場合、自分は敷地に
魅了されていた。そしてクライアントの大らかで優しい様にも感じ入っていた。
幸運にもこの2つは密接に関係ているように思われ、生活のイメージが明瞭
になるのを感じた。素直にこれをカタチに導く。



・・・どうカタチにするのか?いつもこれだけは難題中の難題。



※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程をしております。

DOMA/道南の家 設計 vol1 「初めまして。」

昨年、道南で平屋の住宅”DOMA”が竣工した。自分も好きな住宅を設計する
ことができた。その過程は「設計とは?」を紹介するに適当な事例になるのでは
と思い、また記録として整理したいと思う。


※一つの事例として読まれる方の参考になれば幸いです。


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はじまりは2005年の春、まだ雪の残る頃。住宅の依頼を受けて、クライアントに
お会いすべく現地、道南の地を訪ねる。

その敷地の印象は忘れられない。函館山が一望できるパノラマが壮観だった。
遮るものなく真正面に景観を楽しめる広がりとは北海道でもそう出会えるもの
ではない。広すぎて怖くなる程だった。


初めてお会いしたクライアントご夫婦は優しく、おおらかで親切な方々であった。
滞在の間とても居心地よく過ごさせて頂いた・・・。


設計の始めは様々なことをお聞かせ頂く。敷地のこと。家のイメージや大きさ、
部屋の数、水廻りについて。予算や工期などの基本的な条件を確認させて頂く。
ついで、来客の頻度や持ち込む家具類、将来像、好みの家、スタイル、デザイン
等をざっくばらんにお聞きするかもしれない。

本当に欲しい家とは?この正解のない姿を求めることこそ設計なのだとと思う。
ともかく色々なことをお聞きする。まったく関係なさそうなことも、無駄とも思
える事も些細な事柄も。どこにヒントが隠されているのか分からないので。


普段の生活日課や休日の過ごし方かもしれないし、落ち着いた夜の過ごし方、
趣味。好きな音楽や映画、本。都度、色々探し回る。夢や希望と現実と記憶や
思い出、どんなことでも屈託無くお話頂ければといつも願う。


DOMAではその敷地の存在感が圧倒的だった。またクライアントのこの場所へ
の強い想いと理解、そしてお二人の優しさやおおらかさが印象的だった。
なにより「終の棲家」であること。これが明白でもあった。




※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程を紹介しております。