外壁のディテール決定物語。  ■S-house vol.14

立平葺は特殊な加工部材を用意せずとも、折る、曲げる、掴むという
基本的な加工で納まるシンプルさ、面白みのある仕上げだと思う。
故に、なるべく複雑な納まりは避けたい。出来るだけ簡素に考える。








        


監理が始まると直ぐに窓廻りや軒先、水切りなど一式のスケッチを
描き上げている。その中の一枚はアプローチの納まりについてを記す。


ある日、これでは出来ないと連絡が入り、現場ヘ向かう。担当者、大工、
板金職人を交えてどう納めるかの議論を交わす。さて、何が問題か?


「立平葺」、アプローチ壁の「羽目板」その「天井」、その正面上部の
張り分け部分の「板金平張」。各々直行する壁と天井。4種3面が
交わる実に難しいポイントで一筋縄では解決出来ない。



一般的には違う部材を当てて、枠状にして解決してしまう。出墨、入墨、
何かと何かの交わる部位は全てディテールが発生する。板金納めは
様々な工夫が可能、安易な納めを許さず問題を持ち帰ることとなった。






    


数日の間イメージを膨らませ、スケッチブックが似たようなたくさんの
絵で埋まった頃、一気に描き出す。A案は当初イメージを周到した
シンプルなタイプ。ただ、一ヶ所はテクニカルな解決を強いている。






    


2つめのB案はハゼの立てることで、どの問題にも答えられる名案だ。





        


全て隅を確認し、これを現場に持ち込む。スケッチは緊張の一分の一、
実寸だ。全ての職人さんの合意を得て無事にディテールが出来上がる。






私の場合、監理とはこのような具合。現場が始まってからも忙しい。
予算の楽な現場はなく、厳しい条件ほど工夫は欠かせない。上手く
行くこともあれば、苦労することもある。




最初に「こうしたい」という部分はスケッチにして渡してしまう。描けば、
施工者は良く検討してくれるもの、そこから全てが始まる。今は手描を
多くしている。その方が、より現場の職人に伝わるように思えるので。