DOMA/道南の家 設計 vol14 「暖房」

ここで暖房について少し。様々な熱源、様々な暖房方法があります。
選定はどうしよう?DOMAの事例を紹介します。 
   

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オール電化として当初から話は進んでいた。さて実際どうするか?先ずは
ほくでんに試算を依頼する。現状の図面を基に幾つかの機器、暖房方法を
検討をする。・・・納得のものではなかった・・・



平屋である。南側は全長に土間がある。基本的には一体の空間である。
空間の特性に活かした計画は難しい。床暖房を使って効率的に全体を
温めることはできないか?・・・床下地中蓄熱式の電気床暖房を検討する。



DOMAで検討したのはサーマスラブ。イニシャルは高く付く。減額案の筆頭
となることを覚悟の上で図面に盛り込むこととなった。試算ではランニング
コストで良い数値が確認できた。パネルヒーターなどの設置が不要なので
家具の置き場に困らない。なにより土間を活かし平屋の空間を効率的かつ
緩やかに暖めることができる。



この後サーマスラブとは最後まで様々に格闘することになる。
・試算について他と比較できる試算と推奨する試算を正させる。
・過去にあったトラブルを確認し対処、対策を講じる。
・効率的なパネルの敷設のために基礎伏図を検討する。
・施工状況を現地で確認する。
・適切に使用開始できるよう引渡し時までの余熱を管理する。
・実際の使用に際し適切なアドバイスとアフターを行う。
などなど。担当者様今後ともよろしくお願いします。





試算ではその負荷に注意が必要かもしれない。一般住宅での負荷、基準
となる数値があるわけではない。経験値や実値が参考となるのだけれど、
熱源を提供するメーカーに有利な負荷が用いられるかもしれない。
あくまで平均値であり、実況、実際の使われ方により異なってもくる。
全く同じ家、同じ場所、同じ人、同じ時に暮らし、違う仕様を比較できたなら
はっきりとするのだけれど実質不可能。しかし一度是非とも見てみたい。





※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程を紹介しております。

DOMA/道南の家 設計 vol13 「実施図面」その3

図面の中でも特に好きなのが矩計(カナバカリ)図。これが描き上がると、
空間が出来る!その実感が沸いてきます。DOMAでは・ ・ ・ 
   

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この矩計図を描くのにどれほどの時間を費やしたのかわからない。


あっさりとした図面なのだけれどDOMAの全てが凝縮している。構造図の成果が
反映され、断熱仕様や暖房も図示される。眺望、採光、換気が解かれ、各部の
高さが明示されている。空間が地に根ざすよう可能な限り高さを押えたデザイン、
少しでも高くなると浮き上がり緊張が解けてしまうようで、ミリ単位の調整を何度も
チャレンジし納得行くまで描き直したものだ。


平面図が人の動きを図示するのに対して矩計図もしくは断面図とは”空間”を表す
図面となる。実際に立ち会うのは空間であり、この図面の良し悪しが問われること
になる。断面のカッコよい建築はその空間がカッコよい。




ギリギリまで削ぎ厳しく求めた空間、光や風が満ちる姿を見るまではまだ時を経る
こととなる。実施設計は開始してから既に1ヶ月半が過ぎようとしていた。次はいよ
いよ見積もり依頼をし、業者の選定となる。


※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程を紹介しております。

DOMA/道南の家 設計 vol12 「実施図面」その2

自分は照明が大好き。器具選定からスイッチやコンセントまで計画します。
実施図面ではそのように表現されているのか?を少し案内致します。
   

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照明器具は中でも特に好きだ。その計画は人には任せられない。照明コンセント類
を示したのがこの図面。器具の選定からスイッチ、コンセント類を描き示している。


小さな光源をたくさん配置する方が綺麗な光の空間をつくることが出来る。光源が
目に刺さるものは避け、壁や天井を明るく保ち、清潔感を作ることも大切だ。


多灯する短所は照明器具の数が多くなること=コスト増。これにはいつも悩まされる。
そのため、見せる器具と見せぬ器具の選別は重要だ。ベースはダウンライトを用い、
壁面を照らすブラケットや絵画用のスポット、梁上の小径器具、間接照明のための
線光源・・・Panasonic、DAIKO、maxray、Yamagiwaと複数のメーカーから適材適所
に器具を選定している。


見せる器具はダイニングキッチンのペンダント照明。早い時期から相談していたもの。
奥様の第一印象がそのまま使われることとなった。ドイツのリンブルグ社製のガラスの
筒状の器具。高価な器具を3灯並べる!!これはとても楽しみにしていた。





※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程を紹介しております。

DOMA/道南の家 設計 vol11 「実施図面」その1

DOMAの設計過程を紹介するSORYを再開。「実施設計」とは?
成果となる実施図面について、何編かに別けて紹介します。
   

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2009年6月中頃、最後の実施設計打合せのために道南に走る。
転機となった新たな敷地、「急展開」を経て実施図面を一気に製作し、
実施最後の打合せとなる。また徹夜で走ったような気がするナ・・・。


     
これが決定案と平面図。それまでのプランに比べて劇的に簡明になっている。
平面詳細図は1/50スケールで描き込み。


     
窓と壁、それに屋根。ここまで簡素に構成された立面はなかなか描けない。


     
展開図。居室の壁面を描いたもの、室内の雰囲気が最もよく分かる図面。
airinessのタイトル画像にもなっているハイサイドライトが描かれている。
キッチン、水廻りは特に描き込み多く、この日も激論(!?)を交わす。


     
その激論の的となった平面詳細図の水廻り部分。描き込みは当初に比べて
圧倒的に増えている。何をどこに収納し、どう使うのか?この日も再検証の上、
確認作業を進める。かなり細かく、mm単位の調整が施されている。


     
基礎伏図。事前に行われた地盤調査により必要となる杭を効率よく配置する。


     
梁及び小屋伏図。この長大なプランの特徴はシンプルな構造にあると思う。
部材は必要な検討をし断面を算定する。負荷が大きく背の必要な梁をヤング
係数の大きな材を用いて調整し、仕上げがスッキリ納まるよう計画している。
無理なく無駄なく速やかに力を伝達し基礎、杭、地盤へと伝える構造計画。



※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程を紹介しております。

DOMA/道南の家 設計 vol10 「急展開」

設計では、”転機”となるアイディアが浮かぶことがある。それは何時も異なります。
”DOMA”では敷地の変更という事件をキッカケに進んだプラン、抱える幾つかを
解決する秘策が本当にふっと、浮かびました。
   
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変更後の敷地は印象的だった。もしもこの敷地でスタートしていたならば?
平屋で長く・・・・・・そのまま広がりを目指して伸びればイイ。
自分は迷うことなく一文字に伸びるシンプルなプランを描き始めていた。



実施は進み仕様も定まりつつある。しかも時間の余裕はない。変更となれば既に
理解を深めイメージを膨らませているクライアントを混乱させてしまうかもしれない。
しかし、そうであってもこれは相談すべきことと確信していた。



プランは容易ではなかった。割高な平屋、面積を絞らなければならない。各部、細部
を徹底して見直し無駄を削ぐ。エントランス廻りではすっきりと外部物置を納める方法
が見つからない。そして、最も難しかったのが増えた「もう一室」だった。





土間側から見る。玄関、収納、居室の位置関係がわかる。




北側から見る。下階が外部物置。


急展開!! DOMAにおいて最も重要な転機となるものだった。得たアイディアは
肝心な全てを解決する秘策となった。・・・不思議なことに自分のスケッチブックには
突然このアイディアが描かれている。本当にふと、決定的に浮かんだらしい。


一室を中2階に配置する。こうすることで一列にならぶ居室は相互に干渉せず、また
プライバシーを守ることができる。エントランスを土間の延長に配置でき、外部物置
はこの室下に設ける。高さはないものの大きく収納性が上がる。6段の階段で上がる
この室は天井がギリギリである。ここの断面だけは何度も何度も検討を繰返した。
つまり、勝手良く心地の良い空間、美しいプロポーションを求めて。



敷地との関係、住まう人のスタイルにダイレクトに応えるプラン。



FAXにて急遽お知らせし、電話にて打合をする。クライアントは驚かれたハズだ。
しかし、そのような大きな変更にも関わらず、順序だてて整理して検討下さった。
何事にも前向きに取り組み、常に楽しさを忘れない方が住まう家。
提案した以上、本当に良いものとなるように必至で設計に取り組む。



※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程を紹介しております。

DOMA/道南の家 設計 vol8 「敷地変更!」

実際に設計に携わると思わぬ出来事に遭遇することは多々あります。
敷地にまつわることは少なくありません。ただ、”DOMA”で起こった
出来事は想像したこともなくかなり特別なことでした。

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2009年5月の中頃、「敷地が変更となる。」の穏やかならぬ連絡が入る。


行政上の都合らしい。その経緯は別として、このような事態が起こるとは!
敷地はすぐ隣へと移ることとなる。現地を見るまでは油断を許さぬ状況。
出鼻を挫く出来事なのだけれど、この機を使ってもっと良くならないか?
この時、密かに直感が働いていた・・・。



このトラブルがキッカケとなり後に急展開を生むことになるのであった!



※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程を紹介しております。

DOMA/道南の家 設計 vol9 「実施設計」

実施設計とは?実際に築く建築の詳細設計となります。見積りの根拠となり
契約の際の原図となります。ではどのような図面があるのか?”DOMA”の
その設計過程を通じて少しばかり案内致します。

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5月最後の休日に道南を訪ねる。実施設計の第二回目となる打ち合わせ。
(その間に契約でお会いした際に一度、打合せを済ませている。)

1/100スケールで検討していた計画と異なり実施設計では1/50スケールに
精度を上げて詳細に検討して行く事になる。

水廻りは特に込み入る。建具の納まりや各スペース、収納、衛生設備機器、
家電類を描き込み寸法を微妙に調整して行く。

基本となる矩計図(断面全体詳細図)の検討にも余念がない。基礎や構造を
含め断熱や各部の納まりを考えながら作り始める。完成にはまだ遠い。

展開図は最も親しみやすい図面となるかもしれない。何がどこにあり、どんな
空間なのか?平面と合わせて打合せの基本となるだろうと思う。

衛生設備は気になるところ。これは機器の姿図。この仕様はコストを大きく左右
することになる。第1回目の打合せを基に選定し提案をさせて頂く。持ち込んだ
カタログは山のようであった。



そして変更後の敷地を眺める。緑濃い雨の日、函館山が遠くに霞む。





※設計事例として”DOMA”(写真集に掲載)、その過程を紹介しております。