山の様。

建具枠工事、ユニット(家具什器)工事施工図、
125枚となった。この他に建具工事図面がある。
※建具とは、戸、障子や襖、収納扉等の事。


この数週間、ずっと私を捕らえて離さなかった。
施工図担当者は異例に事だけれど、定例に3度
付き合って下さった上に、その定例が朝から
夜までの終日に至っていた。有難う御座います。


契約図(実施設計図)には詳細を掲載しては
いたものの、より一般的な仕様にて描かれた
それら施工図は、意図の違うものも多かった。
もっと安価で簡素、けれど何とか質は欲しく。
とても難しい要望をしていたと思う。


なかなか伝わらずストレスを感じていたけれど、
先方も相当なストレスを感じていたはずだ。


定例の前日に一通りの図面がPDFで届いた。
修正を告げたい部分は若干はあるものの、
不足の無いものと思う。ありがとう。

アイディア色々。

少し前の事、玄関先のデザインに悩んだ。
悩んだのインターホンのプレート。
インターホンは今時、とても便利だ。


たまに、近所に言った時に設計した住宅に
ふらりと立ち寄り、インターホンを押す。
留守でも録画がされるので、後で連絡がある。
「映ってましたよ!」と。とても恥ずかしい。


インターホン自体はどうにも綺麗ではない。
素っ気無く古めかしい家電のようでもある。
何とか綺麗に佇みたく、カバーを考える。
これがインターホンのプレートとなる。


プレート自体は、今は既製品も多々ある。
しばしば用いるのは、他にポスト口と、
それに表札を兼ねるもの。
玄関先に在るべき様々を一まとめに整理が
出来れば、その玄関先、ポーチの佇まいを
整える事ができる。


マンションのエントランスでも悩んだ事を
いま少し思い出した。携わった物件では、
数種類のデザインを考案した。
自立型を躯体で作ったり、石張り仕上げに
してみたり、様々。


住宅ではステンレスやアルミの板材を加工、
外壁に取り付ける事が多い。




この度のもの、特別凄い発想ではないものの、
モルタルの壁であることから光映えするので、
スケッチの様なデザインを思いついた。


アプローチの空間は小さい方が良い。
おまけに、やや暗めである事も欠かせない。
大きく明るい玄関先を求めても、一歩外に
出ると、遥かに大きく明るい外の世界が在り、
絶対に適わない。その外の大きな世界から
違う世界(室内)へ導くべく、一度断ち切る
潜りの間となる。


茶室のにじり口、身を屈めて入るなら、
3畳の茶室でも広がりある空間を創れる。


と言うことで、ここも広いスペースはあるものの、
大きな空間ではない。その壁面にさりげなく、
コレ見良しの何かは似合わないので、悩んでみた。


プレートに開口加工を施せば高価になるのだ
けれど、可能性はあるかな?と思っていたのだ
けれども、実はこれ、即効で却下であった。


まぁ、温めて置こう。いつか使えるかもしれないし。

全力。


「次はトマム」と電工表示されてからが長い。
いつまでもトマムには着かず山間を走る列車、
今日の車窓は終始、深くはないものの白色で、
その山間では降る雪は増し薄暗い。
繰り返えされる山と木の風景は同じに見え、
雪だけが流れていた。車内は暖かく眠いはず
なのに眠れない、つかの間の休息の時間かな。


キッチンを含め家具を検討していた。
コストが厳しい今、出来る限りシンプルに、
手数を掛けずに納められる方法を練っていた。
必要に応じて実寸を含めスケッチを描き悩み、
これで行こう、と決心できたのは既に朝、
出立の直前と行っても良い。


始発の電車に乗り込んでから建具関係の施工図を
チェックし始め、余計を省く術を探しつつ。
今日も長時間となるだろう定例を思うと、
車で行けば帰ってくる気力を残せそうな気もせず、
その体力も不安な程に全力だった事もあり、
寝ないと効率は落ちて仕事は進まないのだけれど、
午前10時に現場打合せスタート。
工事も終盤に差し掛かり、外装の仕上工事は佳境、
内装も準備が進む。様々な工種の職人が数多く、
見慣れた大工さんを見失えるくらいに増えている。
現場代理人も、各工事の担当者も職人や関わる
別工事の職人から要望が突き上げられていて、
流石に誰しもが余裕を失っていて、殺伐とはせず
とも殺気立つ空気はある。幾人もで取り組む
規模ではないものの、一人で抱えるには巨大だ。
現場を隅々まで見て歩けばそれで半日はなくなる。
早々に見ると見落とす部分も出て来る。
互いに要所を押さえつつ、優先順位を見極めて
事を解決して行き、難題には皆で相談しつつ、
笑みよりは仕事を消化出来ている実感が強くあり、
伴い、まだまだ果たさなければならない仕事も
明らかとなって行き、なかなか果てしない。


現場打合せを終えたのは午後8時、食欲も眠気も
出て来ないくらいにエネルギーを消費し切った。
JRで良かった。
きっとトマム近辺の道は滑るんだろうな。

工事進む。


棚足場が組まれ室内の様子は伺う程度なのだけれど、
本堂含め、工事は進んでいる。本堂は内陣の天井面の
加工が進む。手間を要するデザインとした事もあり、
大工は棟梁が健闘して下さっている。


軽天といい軽量な鉄骨(LGS)を使う工事に比べ、
木造はやはり柔軟で細かな所まで手が加えられる。
精緻で明らかに細かな作業にもなるのだけれど、
これまでの構造に関わる大きな木加工と比較して、
明らかに、いよいよ内装工事という具合でもある。


仕上面を意識できる作業、電気や設備工事はその
前に内側に造られていて、これまで重ねてきた
打合せの様が見て取れる。


今は建具や家具の施工図確認に忙しくあり、
自分に全く余裕がなくなってしまっている・・・
図面製作の担当者には定例を2度に渡り参加頂き、
終日拘束してしまった。申し訳ない。


限られた予算の中で無理は言えない。
最も厳しいのは手数を要する納まりを求め難い事。
どこまで出来るのか?これを確かめつつ細部を
詰めて納まりを決めて行く。

内陣

お寺の本堂には『内陣』と『外陣』とが在る。
外陣は我々が在る場所、阿弥様は内陣に在る。
伝統的な本堂では、これは明瞭に仕切られる。
一般にその設えは高価で華麗、相応しく在る。
ローコストで考える時、再現は非常に難しい。
「仕切りには拘らず」という要望があった。
果たして、どう内と外を仕切り無しに実現
出来るだろうか?模型であれこれを試した。



内陣上部に垂壁を設ける。一般には透かし彫り
の在る欄間や大きな柱で区分されるもの、
垂壁だけでも資格化は出来るものの、コストを
考えるとクロス張の壁では心元がない。
模型では比較対象として製作。



現場を見て閃いたアイディア。仕切るので無く、
ヒダを幾重にも重ねてみた。もう一枚加えられ
れば、奥行き感を築けるだろう好みの一案。


ただ、そもそも奥行き方向の余裕は無く、
須弥壇もあり、重ねる事が難しくもある。



最初に考えていた一案は、須弥壇の上空を低く
押さえ、空間に緊張を与えることで、須弥壇
大きく、納まる阿弥陀様が大きく見えるように
考えたもの、仕切りなく内陣の表現を試みる。



照明、音響設備が備わる本堂、それらを含め
思案し、前案から発展検討をしてみた。



更に、設けた天井面を奥へ長く伸ばし内陣を
包むように施している。


天井を無くし大断面の梁を現しにする考えもある。
写真を撮り忘れてしまった・・・


最後の案を温めてみたい。

板金。

現場代理人は本当に適切な方、板金の仕上げについて、
設計者が求む仕上がりを計りかね、解決のために、
板金職人を現場定例の時に呼んで下さった。


現れた職人は二人、職人らしく自信に満ちる方々。
ただ、設計者先生に呼ばれて、でもあったので、
ややぎこちなくもあったかな。


初見の職人さんとの対面はいつも緊張ある楽しい時間。
「先生」を気取って上からモノを言う事も出来るけれど、
所詮、現場は職人の手によるもの。高圧的では意味がない。
先ずは彼らの力量を計りたいと考える。その上で、
最上の仕事を求めたい。求められれば、より楽しい。


いつしか事例は幾つか持っているので、お見せする。
好みの事例も、そうではない事例もある。


響いた一つは、最も基本となるハゼ組みの仕上げ写真。
やや逆光で板金掴みの起伏が強く陰影に出る写真。
つまり、それは粗がもっとも映り込むものなのだけれど、
その事例はその状況でも実に綺麗だ。


このくらいの仕上げを求められる?


と言う要望は、強烈だったに違いが無い。
その事例は本当に親身に職人が携わってくれたもので、
おそらくはその凄さを誰もが気がつかない程に凄い。


求めたのは丁寧な仕事。技術に裏付けられた丁寧な様。
そして、その仕事に誰も気が付かない程の仕事。
そう告げると、現場代理人含め一同共に笑う。


分かる人だけは気付き、寄り眺め、感心する仕事だ。


これまでの描いたスケッチのデータは何時も携えていて、
この時、その場でその時に描いたディテールも案内した。


職人二人は、一見しただけでそれを把握し、要求レベルを
飲み込み、提供できる仕事を確認すべく、取り組まれた。
当日に急遽呼ばれ、請われ、暗くなり始めた頃に引け、
暗くなった頃に現場にはサンプルを作って戻ってきて、
やっと自由時間を得て現場をさ迷っていた私が、
電気業者につかまり懸念事項を解決したのを眺め待っていて、
間髪入れずに捕まる。


ヘルメットに付けたヘッドライトで誰?だったのだけれど、
作ってみたので見てください、と・・・おや?もう?


要求は15mmで、としたものの彼らは20mmで折って来た。
けれど実際に現場に納まる様は実に綺麗で線が通っていた。


誰にも気付かせない技術に裏付けられた丁寧な仕事とは、
確実に「線」となる納まり。要望を彼らは読み取り、
適切な仕事を提供してきた。優先順位を間違わない仕事。


15mmなら確かに優れるものの余裕はなく、歪む可能性を
否定出来ない。20mmとすることで確実な仕事としたい。
職人の回答の確実さを買い、了承する。


そういうやり取りを現場代理人は認めて下さり、この方針で
現場は進む事になった。一時の出会い、要求なのだけれど、
プレッシャーは掛ける事が出来た。後は答えを待つのみ。


毎週水曜の定例で見る事は告げているので、果たして。


悩ましい箇所は幾つかあるので、今後数回は議論するだろう。
けれど、仕事を終えた時にまだ若いのに職人たる彼はきっと、
私が居る事に気付いているのに、何も言わずに去る様だけを
私に見せるんだろうな、と思う。


その時、どうだ?見ろ!俺の仕事を!という心の叫びが強烈に
響くんだろうな。そういう職人さんに出会えたので、楽しみ。
感じた事、思った事、感謝は現場代理人に伝えます。


され、彼らの仕事が楽しみ。

餅まき !!

餅が宙を舞う・・・何て事だろう?楽しい。
余りにも楽しく嬉しく、笑いを堪えられず。
餅が空を!!良くも生み出されたと感嘆する。


老若男女が乱舞する!!
笑いが抑えられない。集う人皆が楽しそうで、
心から楽しんでいる風景に出会えるとは。


伸びる手、その手に納まる餅。
週中の定例時には曇りの予報だったものの、
この上の無い晴天に恵まれら、素晴らしい空!


建築の現場で出会えるシーンだなんて、嬉しい。
この機会で覚えた、得た歓喜の様は肝に命じて
竣工後にも得られるよう心引き締まる思い。


どの写真も個人の特定できないと思われ掲載する。
子供達が嬉しそうにしている様は本当に嬉しい。


今日は寝坊をした。確信犯で、定例に合わせて
資料を製作し夜更けを過ごし、睡眠時間を削り、
ちょっと遅れてしまう悪い癖が時々あって、
それは申し訳ないと反省しつつ、今日は遅れる
事は出来ないからと何時もよりも早く寝たものの、
見事に数々の目覚ましを止めて安心してしまった。
本当にびっくりした。まさか上棟式で設計者が
不在は有り得ない。そういう甘えを諌めるかの
ような見事な晴天に、心から感謝をする。


建築現場は危険な場所でもある。通常は当然、
ヘルメット着用必須の現場にあって、この日は
大勢の檀家様含め来客があった。施工者は
様々に心配りをして下さり、安全への取り組みが
徹底されていた。


餅まきの際は、お寺の、若坊守が心得ていて、
本当に見事に司会案内をして下さっていた。


私は安心してその光景を写真に撮っていた。
元気を頂いた。こんな楽しい出来事、建築上棟時
には餅をまく事と建築基準法に記して欲しい。


設計冥利に尽きる、建築中の嬉しいひと時。
整え実行下さった多くの方に感謝します。