【DOMA/道南の家】


先週、函館に行った際に【DOMA/道南の家】を訪ねた。
諸事情あり、2年半を経過しようやく完成といった具合。
後は植えられた木々の生長を待ち、よい具合に落ち着く
のは数年後だろうか?とても楽しみにしている。
(俊工事の外観はこちら。)



この広大な敷地、今の自分は魅力に感じている。
けれど、はじめて案内された時は驚き、ここで設計すると
実感した時は「怖さ」が勝ったのを覚えている。
(敷地との出会い、その1 その2



「住む」には「住みたい」という心地を実感したい。
敷地を見る時はいつも、その体感を探すよう心掛ける。


広大な草地に立ち、「ここに住め!」と問われれば、
実感は得にくく、悩みたくなる心境は否定できない。
木を探したり、起伏を利用したり、隠れられるとか、
守られるような何かを探し、寄り添いたくなってしまう。


ではこの敷地は特別かと言えば、実はそうでもない。
周辺の家はどれも似たような背景を持つ。
田園の風景なら、このような場所の方が多いだろう。


その多くの住まいは、忽然と建ち、どこか疎遠の寂しさを
漂わせる、そんな風景は珍しくないだろう。


「敷地をどう活かすのか?」その術こそが設計だと思う。
それが住宅なら、心地よさを見出し、活かさなければ。


DOMA/道南の家】の風景を見て、いいなーと思えたら、
それは設計が役割を果たせた証ではないかと思う。
その敷地の個性を魅力に転じられたということの。
・・・と、少し自画自賛したくなる再会であった。


もちろん、オーナーの逞しさが設計のポイントではあった。
ずっとここに住まわれているオーナーは、ここで生活する
楽しさを既にご存知であった。(例えばこんな光景)


人の大きさに対して、あまりに大地は広くしかも強い存在。
スケールの違いは圧倒的、故に恐怖を覚える。
何かしら囲い込み安泰たる空間を作るのではなく、
「大地に住む」というスタイルに果敢に挑戦できたのは
DOMA/道南の家】のオーナーと一緒であったからだと思う。






・・・個人的には、この木塀はもう少し伸びて欲しいけど。

白い雪夜


DOMA/yamanote】で電気を消して雪を楽しんだ夜、
外は明るい冬の夜空だった。こういう空は好きだ。
北海道の冬らしい夜の一つなのかもしれない。




DOMA/道南の家】の引渡しの夜もこの空だった。


見上げる白い夜空の明かり、綺麗というよりも不思議だ。
身構えてしまうような雪夜、白い大地との対比が素敵だ。
道南も今年は雪が多いらしい。どう過ごされているだろう。




昔から好きな夜で、カメラも持って走り回ったこともある。
自分の携わった建築、是非出会いたいと思うシーンだ。
容易に出会えそうでいて、そのタイミングはなかなか難しい。


それだけに設計の際にも必ず想像するシーンなのだけれど、
こういう情景は空想では思いも寄らず、現実こそが素晴らしい。
パース作製時に再現しても、美化したに過ぎない絵になってしまう。


どう佇むと映えるだろうか?設計の際はいつも意識している。






直にこういう光景は去り、春になるのだろ。

竣工写真から。   【DOMA/道南の家】


   


先日の記事に載せた【DOMA/道南の家】のドマの風景、竣工写真に近いアングルがあった。
竣工写真と住まわれている風景では当たり前のことなのだけれど、随分印象は異なる。
竣工は2年前の秋の終わり頃。冬の始めとも言える。ちょうど雪の日でもあった。


竣工写真は日差しのない空模様。そのため、リビング側の明るさの感じが写真にも写る。
自然光を使う空間こそ建築的な光だと思う。このリビングの明るさは、南側の連窓からの
明るさや天候、陽の傾きに左右されず、いつもこのような柔らかい光に満ちている。





日差しがある時のドマは暖かい。蓄熱効果は高く、暖かさは直ぐに実感することができる。
断熱性能を考えるなら、窓は無い方が圧倒的に良い。でも、先日の写真の風景を思えば、
当然眺めたい。窓が大きくなれば温熱環境は不利となる。これをどう解消するか?


DOMA/道南の家】は地中蓄熱式の床暖房を採用している。ドマは別経路にし、重点的に
管理できるよう施してある。数値性能では十分なのだけれど、後は実際にどう運用するか?


オーナーのT氏は2年の冬を経験され、既にかなり上手く扱える様子。直ぐには温まらない
床暖房、冷め難い故に”安定”する快適さがあるのだけれど、取扱いに慣れは欠かせない。
まもなく冷え込みも厳しくなるだろう頃に寒さを全く心配せずに安心されている姿に安堵する。





温熱環境と眺望や景観との一体感など楽しい住まいの方の両立、住みよい環境を達成する上で
「室内の外」と考えた”ドマ”の空間は重要だ。以前にも載せたこの図版の通り、要となる。


通常、窓下にはパネルヒーターなどを設置し冷気対策を施す。この家は南側に窓が集中し、
ここをドマの床暖房で対処する。リビング等の居住空間は一段上の更に奥にあり、窓際からは
ドマを挟んで遠く離れ、より確実に快適な空間を求めることが出来る。




日差しのある時は日射熱で温み、夜は床暖房で温む。実際、ドマは快適でもある。
同じ構造を持つ【DOMA/bookshelf】オーナーのF氏によると、実は先日のカヌーでも一緒させて
頂いたF氏の後輩は酔ってドマで寝たことがあるらしい。確かに暖かいけれど寝るには硬く痛いかも。


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DOMAの朝。   【DOMA/道南の家】


長く伸びるドマはリビングと外とを結ぶ「室内の外」なる空間。
かつての土間とは異なる、北国にあって重要な室内の外と考えた。



  

函館に行った際に【DOMA/道南の家】を訪ねる。


現場が終わって以来、頻度良く訪ねることは出来ず。別件ではあっても
近くに行った際は覗いて来たい。設計の仕事は竣工引渡しで一段落をする。
その後はアフターなど対応するものの、訪ねる機会は稀となる。


設計、施工を通じて築いた関係、時々はお会いし温める機会は嬉しい。




その【DOMA/道南の家】の早朝のドマの風景。




冷え込み始めた10月の朝、ドマには朝から陽が差し込みポカポカと暖かい。
コントラストの強い光のドマと、北側のハイサイドライトの心地良いリビング。
(写真では上手く写せない! 実際、不思議な自然光の室内空間。)



「これは正解ですよ!」と力を込めて話して下さるオーナーのT氏。
嬉しい言葉です。日常を垣間見せて頂きました。貴重な体験に感謝します。






  

日常のスナップ写真。三間の間口に及ぶ連窓はそのままウッドデッキへ通じる。
遠くに見えるのが函館山。函館の人でもこの風景は想像が容易ではないらしい。
・ ・ ・ しかし、嘘みたいな風景だナー。


訪ねた際は、写真の彼女の他もう一嬢が飛び掛るかのように玄関で迎えてくれる。



奥様いわく「動いてないとすまない人」というT氏は訪ねる度に何かされている。
この日は昨年から始められたソバ打ちの成果を披露し、ご馳走して下さった。
これが実に旨かったー。

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エコ・ハウス   【DOAM/道南の家】




道南で設計した住宅【DOMA/道南の家】が「エコ・ハウス」というカレンダーの一項になるという。
どこで売られるのかも定かではない。ただ、「エコ」について考える良い機会とはなった。


「エコ」 昨今目にするキーワードは、例えばソーラーパネルやLEDなどを差すことが多そうだ。
では、普通の家がそのような装置・技術を備えるとエコ・ハウスになるのだろうか? それでは
あまりにも安易に見える。見落としてはならない大切なことがあるのではないかと思う。






【DOMA/道南の家】は広大な敷地に建つ平屋の一軒屋、設計条件に恵まれ真摯に取組むことが
出来た。それは建築の在り方について一つの理想を求めることの出来る機会でもあった。



自然の力を活用し、無理・無駄なく良好な基本環境を建築自らが創り出すことをコンセプトとする。
特殊な装置や技術に拠らず寒冷地住宅の基本仕様を徹底する、パッシブでローテクな建築。
通風、採光、遮光、眺望、開放、暖房、蓄熱、プライバシーをシンプルにバランスする建築を探求する。


南面全長に渡るドマはバランスを計る上で最も重要なスペースとなる。四季、昼夜の温度変化を
調整する温熱環境の緩衝スペースとなり、外部からプライバシーを守る緩衝スペースとなり、各室
の関係、距離感をつくるプラン上の緩衝スペースともなる。


南傾斜の大屋根の創る遮光、採光、通風の効果を加え、建築自身が良好な環境を築くデザイン、
その特徴は断面(掲載図面)に最も良く現われている。設計当初からイメージしていた姿でもある。
実現すべく何度も何度も検討を重ねた成果、非常にシンプルな建築を導けたのではと思う。












先日一年点検(一年半以上経過はしていたが)を終えた【DOMA/道南の家】、しばらく後の
ある休日の夕方、「遊びに来てください。」と電話が鳴る。そんな嬉しい言葉を聞けたのは、
クライアントが庭で焼肉をし、ほろ酔い気分であったからだけではないはずだ。


エコ・ハウスの記載、まんざら誇張の嘘ではない証にならないだろうか?




DOMA/道南の家】まだ竣工やその後の写真を紹介していない。おいおい書いて行きたい。
今回、エコ・ハウスという視点から整理してみたのだけれど、実際のところ、それが楽しい
住まいでなければ意味がない。ステータスやカッコ良さだけでは退屈過ぎるだろうと思う。


住まうには当然、クライアントの創意工夫は欠かせない。その手助けが出来る建築なのかが
実は問われるのだと思う。その成果が無理・無駄のない姿なら、理想の具現化に他ならない。
気負うことなく自然体で住まえてこそ、真にエコと呼べるのではないだろうか。



引渡しの日の朝、早くに写した写真。リビングの大きな連窓からは日の入らぬ天空光のみ、
厚い雲に覆われた雪の日。北側高窓からの採光が心地よく室内を健やかに明るくする。
断熱、暖房の性能に申し分はなく、ただここに居るのが嬉しかった。







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DOMA/道南の家





DOMA/道南の家、点検のために約一年ぶりに訪ねる。「原野に建つ」という印象は、庭が
整うに従い南国のリゾート?という風情になりつつあった。10帖程の広いテラスが小さく
見えてしまうほど敷地は広大、函館山を見通せるローケーションはやはり圧倒的であった。


一年点検は通常一年後に行う。木造建築の場合、乾燥収縮により木が動くのに伴い、様々
な不具合が想定される。道南の家は冬を前に引渡しとなっていたこともあり、相談の上、
冬を2度越した後、十分に動いた頃に点検することとしていた。


障子や玄関ドアなどの建具は既に施工者により何度か調整されている。この日はボードの
ジョイント部分で浮きのあった珪藻土塗壁や、ナラの無垢フロアーの一部の膨れなど修繕
箇所及び修繕の方法、時期を確認している。


特に大きな不具合はなく、点検は何時しか再会を喜び皆で語らう場になっていたように思う。
時を経た後にクライアントの笑顔と出会える機会、その喜びは何物にも代えがたい。

夜景、外から中を眺める。

提出物のためにDOMA/道南の家の写真を選定していた。自然光が好きなので
あまり日の目を見ない夜景から一枚。竣工写真です。雪溶水でテラスは輝いて
いる。窓に細く、函館の街の灯が映えている。


撮影用に全ての照明を灯しているので、中は煌々と明るい。この内の幾つかを
組み合わせれると好みの明かりが見つかるだろう。夏に行ったときは梁上の
照明を灯し天井面を反射面とする大胆な間接照明だけで過ごされていた。


そうすると函館の夜景が見える。


ドマに大開口を開ける際は庭がある、コートがあるなど考えどころだけれど、
一面が畑であるこの住まいでは夜でもオープンでかまわない。この大胆さを
久しぶりに眺めて想像し、闇の眺めを思い出してしまった。