模型で光を再現   ■BUTSUGWANJI vol.1

お寺の納骨堂を設計している。昨年100周年を迎えたこのお寺は、以前、会館と
庫裏を設計させて頂いている。古く荘厳な本堂を除き、残された最後の部分となる
納骨堂、老築化は著しく、新たにすることとなった。その取り組みは昨春から続く。


納骨堂とは改めて眺めると、それはまるで”黒い”ロッカールームのようにに見えた。
最初の取り組みはレイアウト。数多くの納骨壇、納め方により雰囲気や勝手、工夫が
出来るのではないかと考えた。その地味な作業に費やした時間は計り知れない。


建築規模に大きく影響するため、その配置には効率性が欠かせない。しかし、行為の
尊さを失いたくはない。相反する要望を両立させる空間への模索が続いた。そして、
この納骨堂の仏様の納まる空間。光を大切に、更に入り念に検討を重ねる。




既存本堂から連絡する渡り廊下、庭、納骨堂の空間、26mを超える長い道、接続する
九つの納骨壇の間、永代供養の間、それに仏様のある間。これらを一つのストーリー
上に展開するため、明るさ、大きさを様々に組合せ、空間の調和を計る。






      


道の末端、動線の最後に仏様と出会う。正面の光の中に仏様の立像をシルエットで
納める。写真は自然光で撮った模型写真。自然光だけで、ここまでを表現したい。


長く使われる建物、経年の変化に耐え、古びぬように恣意的なカタチは与えない。
人工照明に頼ると存在が希薄になってしまうので、自然光を基調として取り組む。


住宅を考える場合、自分は北側のハイサイドライトに順ずる採光の常としている。
得られれば、健やかな空間が約束される。


模型では北側風に見えるけれど、このハイサイドライトはあえて南面に用いている。
南側の窓からは陽射が入り込む。その強烈な光は強いコントラストを作り、室内を
明暗に分けてしまう。故に暗がりが発生する。この暗がりが陰湿感を与えかねない。


強い光は明暗生み、暗さを伴う印象はより深くなる。しかし、その暗の末は隅に付き
易く、しかも、なかなか剥れることがない。このハイサイドの対角は納骨壇の納まる
房がある。その最も隅となる床に地窓を切り、この暗をすくい取っている。房では
人は座り、手を合わせる。その一人一人の行為を低く開放される地窓からもたらさ
れる静かな光が照らし出す。


26mの道となるこの間は、そんな陰影を伴う光に包まれ、導かれる。午前中はかなり
印象的なシーンも浮かび上がっていた。さて、果たして。


仏様の間は、見えないけれど、実はあちこちに仕掛けがある。なかなか光が上手く
回り込んでいる様子。先ず、ここまで到達できたことが模型で確認できた。