珈琲と。

着色は自室事務所でマーカーを使う。
そんな高価な代物に頼らなくとも十分なのだけれど、
グレーのグラーデーションがたまらなく好きだ。


お気に入りのPANTONEは既にインク切れ、しかも廃盤。
MAXTONのマーカーもどれもがインク切れに陥っている。
結局、大丸セントラルでCOPICを少々調達してみた。
筆のような一端は心地よい。






何時からか、カフェで珈琲を飲みながら考えるという
スタイルが定番になりつつある。


好みの珈琲、出来れば大きいテーブル、お洒落過ぎない、
適当に空いているなど、どこでも良いが場所は選ぶかな。



冒頭のスケッチはいよいよ追い込まれたある日、描いたもの。
提案し、打合せ、デザインを検証し、ディテールを考える。
真剣に思索に耽る必要がある時、しばしばカフェに逃げ込む。




これらのスケッチは完成形ではない。これは重要なこと。
現場で議論をする上での叩き台に過ぎない。
「こうしたい」という設計意思を説き伝えるもの。


自慢げに見せるものとも違うのだろうけれど、単純に
描けた!という充実感とその喜びを。
淹れて頂く珈琲が十分に冷めてしまうほどに集中出来た時は、
それなりの成果が得られる。そして、その冷めた珈琲もいい。






実際のディテールは現場で創られる。こんなスケッチを
現場に持ち込み、必要な人、職人と議論する。意思を伝え、
どう造るかを検討し、また考える。これを繰り返す。


得られる成果の可能性を大きくする上でも大切な課程だ。
”設計監理”の醍醐味の一つなのだと思う。




設計も監理も、実に孤独な仕事だ。
「判断」をする、極めて重要な作業だ。


描くだけならCADの方が得手だろう。しかし判断を得るには
多くの人の協力を仰がなければならない。そのためには確かに
意思を伝える必要がある。今は自分で描く事を大切にしている。
どうも、綺麗な図面よりも手描の方がよく伝わるように思う。



その作業場所が、いつしか「珈琲と共に」となっている。


持ち込むのはスケッチブックとペンだけ。
最小の道具しかないストイックな環境。
そこに在る熱い珈琲が冷め行く過程という刹那に、
促された集中が意思をスケッチに結実させる。






書くとちょっとカッコよい気もするが・・・
集中した時は良いが、出来なければただ話し込み、
あれこれ広げて場所を占有し、
とどのつまり珈琲一杯でどれだけ粘るつもり!?
という店主には迷惑な客に過ぎない、とも言える。


しかしながら、珈琲の組み合わせは楽しい。