ディテール

ディテールについて書きたいと思いました。
そこで、例えば巾木のことを。


一般に壁の下端には『巾木』が取り付けられます。
壁と床の接するところ、綺麗に見せる、汚れを防ぐ、
アラを見せない工夫、それが巾木でしょうか。




DOMA/yamanote】の巾木、ここに至るまでには
様々なストーリーがありました。
実施設計の末に辿り着いたクライアントの要望は、
『壁』『床』。これに集約されていました。

考えたのは入巾木。目地状です。巾木は必然のもの、
けれど、ただ取り付けてしまうと壁の最前面に付き、
かなり目立つ存在になっています。主役たる床・壁を
引き立たせるに消える目地、としました。



DOMA/道南の家】もまた、明快なディテールです。
敷地の話の際に案内したように、スケールの大きな
大地にある住宅、住まう人の生活をどう守ろうかと
悩みぬいた住宅です。


その悩みはクライアントのライフ・スタイルが解き、
導いてくれました。ここに住まうことに疑いはなく、
楽しみにされ、既に住まう術をお持ちのクライアント、
触発されました。


壁、床、天井という建築の基本要素を出来るだけ簡素に
大地に築き、地面に近い生活空間を設計しました。


建築に求めるものが決まると、ディテールは必然的に定まり、
全体と部分(ディテール)の合致した個性が生み出されます。








DOMA/yamanote】も【DOMA/道南の家】も実は同じディテール。
しかし、形状が同じでも目的が異なると個性も違ってきます。


建築するという事は何かを寄せ集めることとは違い、欲する事を
素直に求め、必要な設えを創造することで豊かさを得るものです。
設計はこれを具現化する作業に他なりません。


巾木は、それが既製品ならメーカー毎に数種を選べ、製材工場の
持っている形材なら、適当なものを選ぶのかもしれません。
けれど、求めるものが明快なら相応しいディテールを考えたい。




最近、悩んだ巾木はマンションのエントランスホールでしょうか。


石、タイル、塗壁、木パネルと多用な素材をインテリアに使いました。
汚れや耐久性、美観を考慮し、各々に適当な巾木を模索しています。


写真の事例では、特別なものは考えてはいないのだけれど、
その始末の悪さが空間に触ることがないように施しています。




空間はディテールに宿る、とも言われます。
日常の住まい、その光景にあって、気持ち良く過ごせるような
佇まいに相応しい様を求めて行きたい。