長万部の跨線橋


長万部を通過する。噴火湾の中では比較的大きな町だと思う。
下の道を走ってもバイパスを走るので街を眺めることはない。
この日は昼飯をと考え街に入る。で、ラーメン屋に決めた。




        

ラーメン屋を出て眺めると、気になるものを見つけた。
三輪車も珍しいけれど、気になったのは遠くに見える階段。




跨線橋だった。岩見沢でもしげしげと眺めたことがある。
その階段の手前に「長万部温泉」の案内標識があった。


噴火湾には温泉が多い。しかし、長万部に温泉のイメージはない。
しかも街中から歩ける範囲らしい。気になったので行ってみる。


車だと大きく迂回しなければ線路の反対に出ることができない。
長万部は鉄道の町だ。線路の対岸は遠く、線路が街を分断している。





見事な温泉街発見!小規模ではあるけれど温泉ホテルが軒を連ねる。
せっかくなので一風呂浴びる。 ウ〜、いい湯。




温泉街を眺めていると、跨線橋のこちら側の端を発見した。
跨線橋の下に見える大きな建物は客車庫らしい。流石は鉄道の街だ。
この鉄の巨大な構築物、首の長い恐竜的な異様な存在感だ。




登ってみる。暴風板のススケ汚れた具合が海辺の町の証だろうか。
なかなかスリリングな展開、空がやけに綺麗で高揚してしまう。




一気に広がる噴火湾!右には駒ケ岳、正面やや左は室蘭だろうか?
有珠山らしきかな?も眺められる素晴らしい眺めが迎えてくれた。
冬は風が痛いほど冷たいのだろうけれど、この日は素敵であった。




函館方面を望むと長万部駅が見える。それにしても線路の数が多い。
かつては鉄道の町として栄えた交通の要所だ。
踏切で渡るには、ちょっと線路が多すぎる。跨線橋が必要なわけだ。




        

左に曲がる路線は5号線に沿い、小樽を目指す。
直進する線路は噴火湾に沿い、室蘭、苫小牧を目指す。
ちなみにこの左手に先ほどの客車庫がある。




昨年訪ねた時にも眺めた本郷新の母子像、夕日の姿も印象的だった。
太く強くそしてやさしい手、写真では見えないけれどその眼差しは
目をそらせなくなるほど鬼気迫る。一人で本郷新と対峙してしまった。













温泉は気持ち良かった。鉄道の街であり交通の要所に温泉とは絶妙。
縄文人も5号線と36号線は使っていたように見える。古くから交通の
便のある場所、長万部。温泉も古いのかと思ったら、昭和30年に
天然ガス試掘の際に沸いて以来なのだという。


温泉で湯を一緒した地元の方と話す。
「車には釣道具、自転車、そして温泉道具を積んでいる。」らしい。
家でシャワーは浴びるけれど週に3回は温泉に入るのだという。




長万部の人は家でお風呂に入らないヨ。」だって。




場所や地域に興味を覚えるのは昔からだ。知らない街を歩くのは面白い。
設計という仕事柄、その興味は役立つ術になっているとも思う。


敷地だけの狭いスペースではなく、もっと大きな視野・視点から取組む方が
自ずとスケールの大きな設計が可能になる。抱える問題は増えるけれど、
どう街と関係するかは非常に大切であり、より大きな楽しみの種でもある。


何をきっかけにしてその場所を知るのか?この日は跨線橋からだった。
子供達がたむろしていたりする、積年の風雨に耐えた古い跨線橋は、
この地に住まう人だけが使うだろう大切な街の道。意味・意義深い。


滞在時間僅かの寄り道、少しだけれど暮らす人の日常を垣間見られた気がする。
実に気持ちの良い時間を過ごすことが出来た。




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