土地探し。  ■S-House vol.5

先日、着工したS-House、相談を受けたのは一年以上も前になる。
古くからの友人であるクライアントの「家を建てたい。」という相談は
本当に嬉しいものだった。期待に応えるべく、緊張の時が始まる。


相談を受けた当時、既に予算を計画し、土地探しも始まっていた。
この土地探しは”縁”を求めて、後に多くの変遷を経ることとなる。


設計の業務に土地の売買は含まれない。ただ、不動産業者の伝は
あり、探すお手伝いが出来る。S-houseのクライアントは自ら情報を
探し出し、幾つかの候補を見せて頂くこととなった。






土地探しから参加する設計の機会とは、やはり緊張が伴う。土地とは
財産であり、選んだ場所の可能性を最大限に使い切りたいと願う。
まだ何も具体的ではない状況ながら、自分はエスキースを繰り返す。



幾つの敷地を一緒させて頂いたろうか。初めて出会う意識すべき場所は
いつも特別だ。外から内から、あちこちから眺め感じることを大切にして
観察する。「ここに住まう」ためのヒントが必ずある。


地理的な要望は当然として、ではどのような住宅がイメージ出来るのか、
実は決定においては欠くことのできない大切なものだと思う。自分は、
まず例えばとしてではあるけれど、候補の土地でプランを試みた。



土地が決まらなければ、無駄な仕事になるかもしれない。けれどこれも
設計の一つ仕事だと思える。場所を決めるべく初めから参加できることは
貴重なことだ。まだ要望もまとまってはいないクライアントから、思うがまま
に話を伺い、良し悪しを問うことも含めて幾つも、提案をさせて頂いた。


そんな試行錯誤を通じて、場所の魅力を知り、理解を深め、建築の可能性を
感じて頂けたらと考えた。同時にプランというカタチあるものを通じ打ち合わ
せる過程から、より具体的な要望を発見出来たのではないかと思う。




自分は、縁起を担ぐことはないし、頼ることも好みはしない。建築行為
とは築くものであり、担いだり、頼るものでもない。けれど「出会う」という
機会だけは、何かしら特別なものなのかもしれないとも思う。


S-Houseのクライアント、土地は思わぬかたちで決まることとなる。それが
昨年末のことだった。決まらずに滞っていたある日、報告の電話がなる。